「ラジオCMを、AIナレーション(合成音声)で作れるの?」
「人のナレーターと比べて、何がよくて、何に気をつければいいの?」
結論から申し上げると、AIナレーションでもラジオCMの音声は作れます。原稿を変えてすぐに作り直せる、費用を抑えやすい、といった利点があります。一方で、声の表情や「間」の表現は、人のナレーターのほうが得意です。また、使うAIサービスの利用規約で広告や放送に使えるか、実在する人の声に似せていないか、放送局の考査で問題がないかを確認する必要があります。
この記事では、総合広告代理店フリーザロックエージェントが、AIナレーションを使ったラジオCMの特徴、向いているケース、権利と規約の注意点、仕上がりをよくするコツをまとめます。
AIナレーションとは
AIナレーションは、文章を入力すると、コンピューターが人の声のような音声を作る技術です。「音声合成」や「合成音声」とも呼ばれます。声の種類(男性・女性、年代、雰囲気)を選び、読む速さや高さ、間の長さを調整して使います。
ラジオCMは、映像のない「声と音」だけの広告です。そのため、ナレーションの声の印象が、そのまま会社や商品の印象になります。AIナレーションを使うかどうかは、費用だけでなく、伝えたい印象に合うかどうかで判断します。
人のナレーターとの違い
| AIナレーション | 人のナレーター・声優 | |
|---|---|---|
| 費用 | ナレーターの出演料がかからない。サービスの利用料はかかる | 出演料がかかる。使う媒体や期間で変わる |
| 作り直し | 原稿を直せば、すぐに音声を作り直せる | 録り直しには、もう一度スタジオとナレーターの予定が必要 |
| 表現の幅 | 落ち着いた説明の読みは得意。感情をこめた演技や会話は苦手なことが多い | 感情、間、強弱、会話のかけ合いなど、細かい表現ができる |
| 読み間違い | 固有名詞や数字、同じ漢字で読みが違う言葉を誤って読むことがある | 収録のときに確認しながら直せる |
| 使用期間 | サービスの規約による | 契約で決める。期間を延ばすと更新費がかかることがある |
AIナレーションが向いているケース
・内容をよく変えるCM:セールの日付、キャンペーンの内容、季節のお知らせなど、原稿を短い間隔で差し替えるCM。
・パターンを多く作りたいCM:店舗ごと、地域ごと、曜日ごとに言葉を変えたCMを、何本も作りたい場合。
・試しに出稿してみたいCM:まずは小さく始めて、反応を見てから本格的に作り込みたい場合。
・説明が中心のCM:営業時間や申し込み方法など、情報を正確に伝えることが目的のCM。
反対に、ドラマ仕立てのCM、会話形式のCM、感情を動かしたいCM、ブランドの「声」として長く使いたいCMは、人のナレーターや声優のほうが向いています。
使う前に確認したい3つのこと
1. AIサービスの利用規約。AIナレーションのサービスには、それぞれ利用規約があります。商用利用ができるか、広告やラジオ放送、radiko・ポッドキャストの音声広告に使えるか、有料プランでなければ使えないか、クレジット(サービス名の表示)が必要か、使える期間に制限があるか、などを確認します。ラジオCMにはクレジットを入れる場所がないため、表示が条件になっているサービスは使いにくくなります。
2. 実在する人の声に似せていないか。有名人や声優の声に似せたAI音声を、許可なく広告に使うことは避けます。有名人の氏名や肖像などが持つ「お客様を引きつける力」を本人が独占できる権利(パブリシティ権)は、最高裁判所の2012年2月2日の判決で認められています。声の無断利用についても、法務省が2026年4月から「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」を開き、「生成AIによるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針」として取りまとめ報告書を公表しています。広告に使う声は、権利関係がはっきりしたものを選びます。
3. 放送局の考査。ラジオCMは、放送前に放送局の考査(内容の審査)を受けます。判断は放送局ごとに異なるため、AIナレーションを使う場合は、制作の前に放送局の考え方を確認しておくと安心です。考査の全体像はラジオCMの考査とはで解説しています。
仕上がりをよくするコツ
読みを確認する。会社名、商品名、地名、人名は、AIが読み間違えやすい言葉です。ひらがなで読みを指定したり、言い回しを変えたりして、正しく読まれるまで調整します。
間(ま)をつくる。AIナレーションは、文と文のあいだが詰まりがちです。名前や電話番号の前後に少し間を入れると、聞き取りやすくなります。
速さは「少しゆっくり」に。20秒のCMに情報を詰めこむと、早口になります。ラジオCMの20秒に入る原稿量の考え方はラジオCMの秒数は20秒か40秒かをご覧ください。
音楽と効果音で表情をつける。声の表情が少ないぶん、BGMや効果音、サウンドロゴで雰囲気を作ります。音楽の選び方と権利はラジオCMの音楽・ナレーターの選び方で紹介しています。
人の声と組み合わせる。メインのナレーションはAI、最後の会社名だけは社長や社員の声、という組み合わせもできます。
放送の基準に合わせた仕上げは同じ
AIナレーションを使っても、放送局に納める音声の形式は、人のナレーターの場合と同じです。民放連と日本広告業協会の「ラジオCM素材搬入基準」(2024年11月1日から新基準)では、平均ラウドネス(耳で感じる音の大きさ)を-24.0LKFS±1dBにすること、規定の秒数の中で前後に0.1〜0.5秒の無音を入れることなどを定めています。
AIのサービスから書き出した音声を、そのまま放送局に納められるわけではありません。BGMや効果音と合わせて音量を整え、基準に合ったファイルに仕上げる作業が必要です。くわしくはラジオCM素材搬入基準をご覧ください。
AIナレーションのラジオCMを作る流れ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. ヒアリング | 目的、届けたい人、放送する局と秒数、差し替えの予定をうかがう |
| 2. 台本と声の選定 | 台本を作り、AIの声の候補でサンプルを作って聞き比べる |
| 3. 規約と考査の確認 | 使うサービスの規約と、放送局の考え方を確認する |
| 4. 音声の作成と調整 | 読み、間、速さを調整し、BGMや効果音と合わせる |
| 5. 確認・修正 | 仕上がりを聞いていただき、原稿や読みを直す |
| 6. 考査・納品 | 放送局の考査を経て、搬入基準に合わせたファイルを納品する |
差し替えのたびに、考査と納品の手続きは必要です。音声を早く作れても、放送の切りかえ日から逆算して、余裕をもって準備します。
AIナレーションか、人のナレーターかの選び方
| こんなときは | おすすめ |
|---|---|
| セールや季節のお知らせを毎月差し替えたい | AIナレーション |
| 店舗ごと・地域ごとに何パターンも作りたい | AIナレーション |
| 会社の「声」として長く使いたい | 人のナレーター |
| 会話形式やドラマ仕立てで、感情を伝えたい | 人のナレーター・声優 |
| まず試して、反応がよければ作り込みたい | AIで始めて、本格的な版は人のナレーターで |
よくある疑問
Q. AIナレーションだと、聞く人にわかりますか?
サービスや調整のしかたによりますが、自然に聞こえるものも増えています。ただし、長い文章や感情のこもったセリフでは、違いが出やすくなります。サンプルを作って、実際に聞いて判断するのがおすすめです。
Q. 費用はどのくらい変わりますか?
ナレーターの出演料がかからないぶん、抑えられることがあります。ただし、台本、音楽、編集、音量の調整、納品の作業は必要です。フリーザロックエージェントのラジオCM制作は1本15万円から(税別)で、内容に合わせてお見積もりします。費用の内訳はラジオCM制作の費用と流れをご覧ください。
まとめ:AIナレーションは「よく変える」「たくさん作る」CMに
・AIナレーションでもラジオCMは作れる。差し替えの速さと費用の面で利点がある
・感情をこめた表現や会話は、人のナレーター・声優のほうが得意
・使う前に、AIサービスの利用規約、実在する人の声に似せていないか、放送局の考え方を確認する
・読みの確認、間、速さ、音楽で仕上がりを整え、搬入基準に合わせて納品する
台本の書き方はラジオCMの台本の書き方、放送枠の手配はラジオCM(放送枠)のサービスページでご案内しています。


