「電車の広告って、本当に見られているの?」
「テレビCMやネット広告とくらべて、どのくらい効果があるの?」
結論から申し上げると、交通広告の効果は、鉄道会社と広告業界の団体が共同で行っている調査で、数字として確かめられます。2024年度の調査では、電車のドア横のポスターは、対象の路線に乗った人のうち推定48.2%が、掲出期間中に「見た」「見たような気がする」と答える水準でした。一方で、効果は掲出の期間やサイズ、テレビCMとの組み合わせによって変わります。
この記事でわかること:交通広告の効果を測る「共通指標」のしくみ、媒体ごとの広告到達率、興味や行動につながる割合、SNSでの広がり、効果を高める出し方と自社での確かめ方。総合広告代理店フリーザロックエージェントが、公開されている調査データをもとにまとめます。
交通広告の効果を測る「共通指標」とは
交通広告は、テレビの視聴率のように「何人が見たか」を毎回測るのがむずかしい媒体です。そこで、公益社団法人日本鉄道広告協会、一般社団法人日本広告業協会、関東交通広告協議会の3団体が、2013年5月に「交通広告共通指標推進プロジェクト」を立ち上げました。交通広告の効果を、各社共通の物差しで示すための取り組みです。
調査は、株式会社ビデオリサーチが第三者として行っています。首都圏の鉄道11社局(JR東日本、東京メトロ、東京都交通局、大手私鉄など)が協力し、1都3県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)に住んでいて、調査の日に対象の路線に乗った人に、実際に掲出された広告を見せて質問します。調査数は1素材あたり300人です。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 広告到達率 | 掲出期間内に、その広告を「見た」または「見たような気がする」と答えた人の割合 |
| 共通指標推定モデル | サイズ、掲出期間、業種などの条件から、広告到達率を推定する計算式。2015年度に作られ、その後データが更新されている |
| 車両メディア | 電車の中の広告。調査では中づり、まど上、ドア横、ステッカー、車内ビジョンの5つ |
出典:交通広告共通指標推進プロジェクト「2024年度版」(2025年3月25日発表)。
市場の規模も見ておきます。電通「2025年 日本の広告費」(2026年3月発表)では、交通広告費は1,736億円(前年比108.6%)でした。鉄道では、車内ビジョン、中づり、ステッカーなど車両の中の媒体が前年を上回ったと報告されています。
媒体ごとの広告到達率(推定)
2024年度版の共通指標推定モデルでは、車両メディアの5つの媒体について、推定広告到達率の平均値が示されています。対象は男女15〜59才です。

| 媒体 | 推定広告到達率(平均値) | どんな広告か |
|---|---|---|
| ドア横 | 48.2% | ドアの横の、目線に近い高さのポスター |
| まど上 | 45.1% | 窓の上の横長のポスター。1か月単位が多い |
| 中づり | 43.3% | 車両の中央につるすポスター。2〜3日など短期が多い |
| ステッカー | 42.6% | 窓やドアに貼る小さな広告 |
| 車内ビジョン | 39.5% | ドアの上の画面に流す動画 |
出典:交通広告共通指標推進プロジェクト「2024年度版 車両メディア共通指標推定モデル」(2025年3月25日発表)。
この数字は、さまざまな広告の平均です。媒体ごとに、調べた広告の業種や期間がちがうため、数字の大小だけで媒体の良し悪しを決めることはできません。大切なのは、次に紹介する「到達率を左右する条件」です。
到達率を左右する条件
共通指標推定モデルでは、到達率を左右する条件(説明変数)として、サイズや面数、掲出期間、ほかの鉄道への出稿、直近1か月のテレビCMの出稿、業種が使われています。条件ごとに、平均値からどれだけ上下するか(カテゴリースコア)が示されています。

期間:長く出すほど上がる
どの媒体でも、掲出期間が長いほどスコアが高くなっています。たとえばドア横は、1週間だとマイナス7.1ポイント、1か月以上だとプラス5.5ポイントです。中づりも、2〜3日のマイナス3.3ポイントに対して、8日以上はプラス4.2ポイントでした。
テレビCMとの組み合わせ:同じ時期に出すと上がる
直近1か月にテレビCMを出している広告は、すべての媒体でプラスのスコアでした。まど上ではプラス3.3ポイント、ドア横ではプラス2.7ポイント、中づりではプラス2.6ポイントです。
サイズと範囲:大きく、広く出すと上がる
中づりはシングルよりワイド(プラス2.0ポイント)、ドア横は1面より3面以上(プラス2.1ポイント)、ステッカーはツインステッカー(プラス2.9ポイント)でスコアが高くなっています。ほかの鉄道にも同時に出している場合も、プラスでした。
なお、このモデルの決定係数(条件でどれだけ説明できるかを示す値)は0.57〜0.67です。残りは、デザインなどのクリエイティブや、そのほかの要素によると考えられます。電車の中の媒体ごとの特長は、電車の車内広告の種類でくわしく解説しています。
交通広告は「興味」と「行動」にどう効くか
2025年度には、交通広告の効果や価値をあらためて確かめる調査が行われました。テレビCMやインターネット広告と並べて、広告を見たあとの気持ちや行動をたずねています。

| 広告の種類 | 接触〜興味(計) | 行動喚起(計) |
|---|---|---|
| テレビCM | 51.0% | 20.4% |
| インターネット広告 | 44.2% | 19.2% |
| 電車のドア上の液晶モニター | 47.4% | 16.6% |
| 電車の中づり・ステッカーなど | 44.7% | 16.1% |
| 駅の壁や柱の液晶モニター | 41.1% | 16.6% |
| 駅のポスター・ボードなど | 40.0% | 16.3% |
出典:交通広告共通指標推進プロジェクト「2025年度版」(2026年3月24日発表)。調査は2025年9月、1都3県在住の15〜59才で、最近1か月に協力鉄道会社の路線を利用した人が対象。
「接触〜興味」は、「つい見てしまう」「知るきっかけになる」「興味がわく」などのいずれかにあてはまる人の割合です。「行動喚起」は、「検索した」「購入・利用を検討した」「実店舗に見に行った」などのいずれかです。
報告では、電車の中の広告は全年代で興味を引き出すメディアであり、男女10代・20代では、行動につながる割合もテレビCMやインターネット広告と同じ水準だったとまとめられています。また中高年層では、電車の中の広告が「興味づくり」、テレビCMが「行動の後押し」という役割分担が見られたとされています。
2024年度の調査では、テレビCMとインターネット広告で同じ広告を見たうえで、電車の車内広告でも見た場合に「より印象に残る」と答えた人が27.8%、「繰り返し見ることで、さらに記憶が深まる」が22.4%でした。駅の広告(25.0%、18.2%)や屋外の広告(23.4%、17.5%)より高い結果です。
スマホを見ている人にも届いているか
「電車の中では、みんなスマホを見ているのでは」という疑問もよく聞きます。2024年度の調査では、ふだん電車の中でよくしている行動として「スマホ利用」をあげた人は75.3%でした。

そのうえで、車内広告または車内の液晶モニターを見ると答えた人の割合は、調査対象者全体で66.8%、スマホを利用する人で70.0%、そのうちSNSをする人で75.7%でした(交通広告共通指標推進プロジェクト「2024年度版」)。スマホを見ている人ほど、電車の中の広告も見ている割合が高いという結果です。
SNSで広がる「二次的な効果」
交通広告は、見た人が写真を撮ってSNSに投稿したり、話題にしたりすることで、さらに多くの人に広がることがあります。2025年度の調査では、電車内・駅・屋外の広告をきっかけに、SNSへの投稿や閲覧、拡散、話題にする、見に行くなどの行動をした人は43.9%でした。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| SNSでの投稿・閲覧・拡散、話題にした、見に行ったなどの行動(計) | 43.9% |
| ふだんの電車利用が週4日以上の人の行動(計) | 48.9% |
| ふだんの電車利用が週3日以下の人の行動(計) | 38.5% |
| 広告に関する投稿を、家族や友人と話題にした | 12.4% |
| 広告に関する投稿を見て、その広告を実際に見に行った | 8.7% |
出典:交通広告共通指標推進プロジェクト「2025年度版」(2026年3月24日発表)。
報告では、とくに10代・20代と、電車をよく使う人で行動の割合が高かったとされています。オンラインで見た投稿から、実際に広告を見に行くという、オンラインからオフラインへの広がりも確認されています。
業種や時間帯によるちがい
同じ調査では、業種ごとのちがいも示されています。電車の中の広告を見て「検索した」割合はアルコール飲料が5.8%、「SNSにアップした」割合はゲームが3.9%と、それぞれ調べた業種の中で高い数字でした。また、アルコール飲料の広告は「平日の夕方以降」に見た広告が印象に残ると答えた人が18.9%で、時間帯の中で最も高い結果でした。商品の種類によって、効きやすい時間帯や行動がちがうことがわかります。
交通広告の効果を高める出し方
ここまでの調査データから、効果を高めるための出し方を整理します。
・期間を確保する:到達率のモデルでは、掲出期間が長いほどスコアが上がっていました。予算が限られる場合は、範囲を絞ってでも期間を確保する考え方があります。
・テレビCMやWeb広告と時期を合わせる:テレビCMと同じ時期に出すと到達率のスコアが上がり、くり返し見ることで記憶が深まるという回答も多くありました。
・ターゲットと時間帯を意識する:若い層は行動やSNSでの広がりにつながりやすく、業種によって印象に残る時間帯もちがいます。届けたい人がよく乗る路線と時間帯を考えます。
・話題になる表現を考える:SNSで共有されることを前提に、写真に撮りたくなる見せ方や、検索してほしい言葉を入れます。
・短い時間で伝わるデザインにする:乗客がポスターを見る時間は長くありません。社名と伝えたいことを1つに絞ります。
デザインの基本は交通広告のデザインの注意点、媒体の選び方は交通広告の種類と選び方をご覧ください。
自社で効果を確かめる方法
業界の調査データは「平均的にどのくらい見られているか」を示すものです。自社の広告がどれだけ成果につながったかは、自社のデータで確かめます。

1. 目的と見る数字を決める。認知が目的なら社名や商品名の検索数、来店が目的なら来店数や問い合わせ数など、目的に合った数字を選びます。
2. 掲出前の数字を記録する。比べる基準として、掲出前の数週間分の数字を残しておきます。
3. 広告専用の入口をつくる。交通広告だけで案内する専用ページ、検索してほしい言葉、店頭で伝えてもらう一言などを用意すると、反響を見分けやすくなります。
4. 掲出中・掲出後と比べる。前後の差を見ます。同じ時期にほかの広告やセールをしている場合は、その影響も分けて考えます。

駅や車内の画面に流す広告の測り方は、デジタルサイネージ広告の効果の測り方でくわしく解説しています。申し込みの段階でできる工夫は、交通広告の出し方もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 交通広告は、何人に見られたかがわかりますか?
テレビの視聴率のように、出稿ごとに見た人数を測る仕組みは一般的ではありません。代わりに、交通広告共通指標推進プロジェクトの「推定広告到達率」のように、条件から到達率を推定する指標が使われています。駅や車内の画面の広告では、放映の記録を受け取れる媒体もあります。
Q. 中づりとまど上では、どちらが効果的ですか?
目的によります。2024年度版の推定広告到達率の平均値は、中づり43.3%、まど上45.1%です。中づりは2〜3日などの短い期間で話題をつくる使い方、まど上は1か月かけて読んでもらう使い方が向いています。媒体ごとの平均は調べた広告の条件がちがうため、目的と期間で選ぶのが基本です。
Q. 首都圏以外の交通広告にも、この調査の数字はあてはまりますか?
この調査は、1都3県に住む人と、首都圏の鉄道11社局の路線を対象にしています。地方の路線にそのままあてはめることはできません。地方の媒体は、各事業者の媒体資料にある乗車人員などのデータをもとに検討します。
Q. テレビCMを出していなくても、交通広告だけで効果はありますか?
交通広告だけでも出稿はできます。調査では、テレビCMを出している場合に到達率のスコアが上がる結果でしたが、出していない場合も含めた平均で4割前後の到達率が推定されています。予算に合わせて、期間や範囲を工夫する方法があります。
Q. 効果を見ながら、途中で内容を変えられますか?
ポスターの差し替えや動画の入れ替えができるかどうかは、媒体によってちがいます。納品の期限や費用も決まっているため、申し込みの段階で条件を確認しておきます。
まとめ:調査データで「見られ方」を知り、自社のデータで成果を確かめる
・交通広告の効果は、業界3団体の「交通広告共通指標」で推定できる
・2024年度版の推定広告到達率の平均は、ドア横48.2%、まど上45.1%、中づり43.3%、ステッカー42.6%、車内ビジョン39.5%
・掲出期間を長くする、テレビCMと時期を合わせる、サイズや範囲を広げると、到達率のスコアが上がる傾向
・2025年度の調査では、交通広告をきっかけにSNSなどで行動した人が43.9%
・自社の成果は、掲出前後の検索数や来店数などで確かめる
交通広告の料金の目安は交通広告の費用相場をご覧ください。


