「交通広告のデザインは、ふつうのポスターと何がちがうの?」
「審査で落ちないために、気をつけることは?」
結論から申し上げると、交通広告のデザインは「見られる時間」「見る距離」「審査」の3つを前提に作ります。電車や駅の広告は、数秒しか見られないことも、遠くから見られることもあります。また、公共交通に出す広告として、鉄道会社やバス会社の審査があり、根拠のない「No.1」や「絶対」などの表現は修正を求められます。この3つを最初から考えておくと、伝わりやすく、やり直しの少ない広告になります。
この記事では、総合広告代理店フリーザロックエージェントが、交通広告のデザインの基本、媒体ごとのポイント、審査で注意したい表現と業種、入稿前のチェックリストをまとめます。
交通広告のデザインの3つの前提
1. 見られる時間が短い。駅の通路のポスターは、歩きながら数秒だけ見られます。走るバスの車体の広告も同じです。一瞬で「何の広告か」がわかることが大切です。
2. 見る距離がちがう。中づりは車内の離れた場所から、ドア横やまど上は近くから見られます。駅のポスターも、ホームの向かい側から見るものと、通路で近くを通るものがあります。媒体ごとに、文字の大きさと情報の量を変えます。
3. 審査がある。公共交通の広告は、事業者ごとの審査を経て掲出されます。表現や業種によっては、修正や掲出できないことがあります。
伝わるデザインの基本
・伝えたいことは1つにしぼる:見出しで伝えることを1つに決めます。あれもこれも入れると、どれも伝わりません。
・社名・商品名を大きく:だれの広告かがわからないと、見た人が次の行動をとれません。
・写真やイラストで目を止める:最初に目に入るのは、文字より絵です。商品や人の写真で目を止めてから、見出しを読んでもらいます。
・次の行動を入れる:「〇〇で検索」、QRコード、店舗の場所など、見た人が次に何をすればよいかを入れます。
・背景と文字の色の差をはっきりさせる:駅や車内は明るさがさまざまです。背景と文字の明るさの差を大きくすると読みやすくなります。
媒体ごとのデザインのポイント
| 媒体 | 見られ方 | デザインのポイント |
|---|---|---|
| 中づり | 離れた場所から、短い期間 | 見出しを大きく、文字は少なく。上部の留め具にかかる部分に文字を置かない |
| まど上・ドア横 | 近くから、1か月 | 見出し→説明→問い合わせ先の順に整理。読ませる内容も入れられる |
| ステッカー | 近くから、小さい面 | 社名と1つのメッセージに絞る。透明部分の決まりを確認 |
| 駅ポスター | 歩きながら、または立ち止まって | 遠くからは写真と見出し、近くでは説明が読める2段階の構成 |
| 車内ビジョン・駅サイネージ | 音なしで、数秒〜 | 字幕と大きな文字。最初と最後に社名を出す |
| ラッピングバス | 動きながら、数秒 | ロゴと社名を大きく。窓・ドアに大事な要素をかけない |
媒体ごとの決まりの例として、仙台市地下鉄の中吊りでは上部20mm以上の「くわえ部分」を確保すること(仙台市交通局「メディアガイド」令和8年6月現在)、都営バスの窓のステッカーでは広告の3分の1以上を透明にすること(東京都交通局「TOEI AD MEDIA GUIDE 2026」)が決められています。サイズや余白の決まりは媒体ごとにちがうため、デザインを始める前に規定を確認します。
審査で注意したい表現
交通広告の審査基準は、事業者ごとに定められています。たとえば京都市交通局の「広告掲出審査基準」(令和3年10月改正)では、公営交通に掲出する広告は「節度と品位をもったもの」とし、次のような表現を認めないとしています。
・根拠のない最大級の表現(誇大広告)や、誤認を招く表現(不当表示)
・射幸心(ギャンブルのような気持ち)を強くあおる表現、比較広告にあたる表現
・責任の所在、内容、目的がはっきりしない表現
・事業者や商品の出どころについて、誤解や混同を招くおそれがある表現
・公序良俗に反するもの、青少年の保護の観点で適切でないもの
東京都交通局の媒体資料でも、根拠のない「完全」「確実」「絶対」といった表現や、効果効能を約束する表現は修正を求められると案内されています。「No.1」「日本初」などをどうしても使う場合は、調査の出典と時期をはっきり示せるかを先に確かめます。
事前の相談が必要な業種
同じ京都市交通局の審査基準では、次の業種は関連する法律に注意し、事前に交通局と十分に協議することとされています。
・エステティックサロン、美顔、痩身、脱毛、植毛など
・健康商品、機能性食品など
また、人の募集(求人)の広告では、雇用主、所在地、連絡先、職種を広告の中に書くことが求められています。自動車の販売や、鉄道・バスと競合する事業の広告にも条件があります。
審査の考え方は事業者によってちがい、同じ広告でも判断が分かれることがあります。業種や表現に不安がある場合は、デザインを作り込む前に、ラフの段階で審査の見通しを確認するのが安全です。
法律の面で気をつけること
交通広告に限らず、広告の表現は景品表示法や薬機法などの法律を守る必要があります。うそや大げさな表示、効き目を約束する表示は、法律の面でも問題になります。写真やイラスト、フォントの権利、人物の写真の同意も確認します。
法律と権利の基本は、広告の表現で注意したい法律と権利でくわしく解説しています。
入稿前のチェックリスト
・媒体のサイズ、余白、透明部分などの規定に合っているか
・数秒見ただけで、だれの何の広告かがわかるか
・見る距離に合った文字の大きさになっているか
・根拠のない最大級の表現や、効果を約束する表現がないか
・「No.1」などを使う場合、出典と時期を示せるか
・写真、イラスト、フォント、音楽の権利を確認したか
・QRコードや検索の言葉など、次の行動が入っているか
・審査と印刷、納品の日程に余裕があるか
よくある質問
Q. 審査で修正を求められたら、どうなりますか?
指摘された表現を直して、もう一度審査を受けます。印刷や納品の期限に間に合わなくなることもあるため、デザインを作り込む前に、ラフの段階で見通しを確認しておくと安心です。
Q. 審査の基準は、どの事業者も同じですか?
同じではありません。事業者ごとに基準を定めています。都営交通の媒体資料には、関東交通広告協議会の広告掲出審査基準が掲載されています。同じ広告でも事業者によって判断が分かれることがあるため、複数の事業者に出す場合はそれぞれ確認します。
Q. QRコードは入れたほうがいいですか?
立ち止まって見られる場所(ホーム、まど上、ドア横など)では、QRコードからサイトに誘導できます。歩きながら見られる通路や、走るバスの車体では読み取りにくいため、「〇〇で検索」など覚えやすい言葉を合わせて入れます。
Q. 動画の広告にも審査はありますか?
あります。車内ビジョンや駅のサイネージの動画も、事業者や媒体社の審査を受けます。静止画のポスターと同じく、表現や業種によっては修正を求められます。
まとめ:時間・距離・審査を前提にデザインする
・交通広告は、短い時間で、さまざまな距離から見られる
・伝えたいことを1つにしぼり、社名と次の行動をはっきり入れる
・根拠のない最大級の表現や比較広告は、審査で認められないことがある
・美容、健康食品、求人などは、事前の相談と記載事項の確認が必要
申し込みの流れと審査の全体像は交通広告の出し方、デザイン全般のコツは成果が出るLP・バナーの作り方をご覧ください。


