「ラッピング電車って、いくらで出せるの?」
「申し込んでから、どのくらいで走り始めるの?」
結論から申し上げると、ラッピング電車の料金は事業者が公開している例で、1両1か月30万円(税抜)や、1編成1か月60万円から(税込)が目安です。広告料金のほかに、デザインやシートの制作、貼り付けとはがし、場合によっては塗装の費用がかかります。車体の広告は、デザインの審査と自治体の許可が必要なため、走り始めるまでに3か月ほどを見込みます。
この記事でわかること:ラッピング電車の公開料金の例、料金のほかにかかる費用、デザインの決まり、申し込みから走行までの流れ、向いている使い方。総合広告代理店フリーザロックエージェントが、公営交通などの公式資料をもとにまとめます。
ラッピング電車とは
ラッピング電車は、電車の車体の外側に、広告のシート(フィルム)を貼って走らせる広告です。「車体広告」「広告電車」とも呼ばれます。街なかの道路を走る路面電車や、新しく開業したLRT(次世代型の路面電車)で、よく見られる媒体です。
車内の中づりやまど上ポスターが「乗っている人」に届くのに対して、ラッピング電車は「電車の外にいる人」にも届きます。沿線の歩行者、車のドライバー、停留場で電車を待つ人などです。
| くらべる点 | ラッピング電車(車体) | 車内の広告(中づり・まど上など) |
|---|---|---|
| 主に届く人 | 沿線の歩行者、ドライバー、停留場の人、乗客 | 電車の乗客 |
| 期間の単位 | 1か月〜1年が多い | 2〜3日、1週間、1か月など |
| 準備の期間 | 審査・許可・施工があり長め | ポスターの納品が中心で短め |
| 自治体の許可 | 屋外広告物として必要 | 原則として不要(事業者の審査はある) |
たとえば東京都交通局の媒体資料では、東京さくらトラム(都電荒川線)は三ノ輪橋から早稲田までの12.2kmを走り、停留場は30か所、1日あたりの乗車人員は5.1万人(令和6年度)と紹介されています。決まった区間を毎日くり返し走るため、同じ地域の人の目に何度も入るのが特長です。
同じ車体の広告でも、バスの場合はラッピングバスの料金と審査の記事でくわしく解説しています。
ラッピング電車の料金(公開料金表の例)
ラッピング電車の料金は、事業者、車両の形式、期間で決まります。料金を公開している事業者の例を、下の表にまとめました。

| 媒体(事業者) | 単位 | 料金の例 |
|---|---|---|
| ラッピング都電(東京都交通局) | 1両・1か月 | 300,000円(税抜) |
| ラッピング都電(東京都交通局) | 1両・1年 | 3,000,000円(税抜) |
| ラッピング電車 ライトライン(宇都宮ライトレール) | 1編成・1か月 | 最低価格600,000円から(税込) |
| 広告電車 2000・9000形(鹿児島市交通局) | 1両・1年 | 2,772,000円(税別) |
| 広告電車 1000形(鹿児島市交通局) | 1両・1年 | 3,250,000円(税別) |
| 広告電車 7000形(鹿児島市交通局) | 1両・1年 | 3,330,000円(税別) |
出典:東京都交通局「TOEI AD MEDIA GUIDE 2026」、宇都宮ライトレール「ラッピング電車のご案内」(2023年9月28日)、鹿児島市交通局「市電・市バス メディアガイド」。
料金の決め方は、事業者によってちがいます。宇都宮ライトレールの案内では、ラッピングできる車両は4編成で、1か月あたりの最も高い料金を示した広告主を優先して契約する「競売方式」とされています。表の金額は最低価格です。また、契約は最低1か月から最長36か月まで、月単位で選べます。
鹿児島市交通局の広告電車は年額の料金ですが、1年未満(3か月から)の掲出もできると案内されています。期間が短い場合の料金は、事業者に確認します。
首都圏の大手の鉄道会社などは、車体の広告を扱っているかどうかも含めて、料金表を公開していない媒体が多く、個別の確認とお見積もりになります。交通広告全体の料金の目安は、交通広告の費用相場をご覧ください。
広告料金のほかにかかる費用
ラッピング電車は、料金表の金額だけでは出せません。広告料金のほかに、次の費用を予算に入れておきます。

デザインとシートの制作。車体の図面に合わせてデザインを作り、大きなシートに印刷します。東京都交通局の媒体資料では、ラッピングに使うフィルムには素材の指定があるとされています。
貼り付けとはがし。シートを車体に貼る作業と、期間が終わったあとにはがして元に戻す作業です。東京都交通局の媒体資料では「制作料及び貼付・撤去料は別途お客様の負担」、宇都宮ライトレールの案内でも、シートの製作・貼り付け・撤去・原状復帰の費用は別に必要とされています。
塗装。事業者によっては、シートを貼る前に車体を塗る必要があります。鹿児島市交通局の広告電車では、シートだけで全体を覆う施工はできず、車体を広告主の色に塗る「下地塗装」をしたうえでシートを貼ります。下地塗装の作業代は1両あたり390,500円〜682,000円(税込、車両の形式による)で、期間が終わったあとの「復元塗装」にも同じ金額がかかります。塗料の費用は別のお見積もりです(鹿児島市交通局「市電・市バス メディアガイド」)。
許可の手数料。車体の広告は屋外広告物にあたり、自治体の許可が必要です。東京都では、車体利用広告の許可手数料は1台1,950円、許可の期間は1年以内です(東京都 多摩建築指導事務所「屋外広告物」、東京都屋外広告物条例)。
| 費用 | 中身 | 確認のしかた |
|---|---|---|
| 広告料金 | 車両を使う料金(期間×両数) | 事業者の料金表 |
| デザイン・シート制作 | 図面に合わせたデザインと印刷 | 制作会社の見積もり |
| 貼り付け・はがし | 施工と原状への復帰 | 施工会社の見積もり |
| 塗装(必要な場合) | 下地塗装・復元塗装・塗料 | 事業者の資料と見積もり |
| 許可の手数料 | 屋外広告物の許可申請 | 自治体の条例 |
ラッピングできる範囲とデザインの決まり
車体の全部を、自由に広告で覆えるわけではありません。安全と街の景観を守るため、広告を出せる面積やデザインに決まりがあります。
広告を出せる面積。東京都交通局のラッピング都電は「車体底部を除く全体面積の10分の3以下」です。鹿児島市交通局の広告電車も、広告表示面積は車両の表面積(底面を除く)の10分の3、文字やイラストなどの表示面積は10分の1とされています。
貼れない場所。鹿児島市交通局の資料では、車窓やドアなどのガラス部分には広告シートを貼れないとされています。宇都宮ライトレールの案内でも、凹凸のある部分、屋根の機器の近く、連結部の窪みなど、安全上や作業上の理由で貼れない場所があると説明されています。
街や車両との調和。宇都宮ライトレールの案内では、車両とラッピング広告のデザインが一定の調和や統一感を感じられるよう配慮が必要とされています。東京都交通局の資料でも、道路交通の安全や都市の景観に配慮した意匠(デザイン)の審査を行うとされています。

デザインを作るときは、次の点を意識します。
・走っていても読める:外から見る時間は数秒です。社名やロゴを大きく、文字は少なくします。
・窓やドアを避ける:大事な文字や顔の写真が、窓やドアにかからないように配置します。
・信号や標識とまぎらわしくしない:信号や道路標識とまちがえるような色や形は、審査で認められないことがあります。
交通広告のデザインの基本と審査で注意したい表現は、交通広告のデザインの注意点でまとめています。
申し込みから走行開始までの流れと期間
ラッピング電車は、申し込みから走り始めるまでに時間がかかります。宇都宮ライトレールの案内に示されている流れは、次のとおりです。

| 時期の目安 | すること |
|---|---|
| まず | 空き枠・募集状況を確認する |
| 開始希望日の3か月前まで | 指定の代理店を通じて、申請書とデザイン案を出す |
| 10週間前まで | 審査委員会のデザイン審査の結果が出る |
| 8週間前まで | 事業者が、沿線の自治体などに屋外広告物の申請をする |
| 30日前 | デザインシートの最終校了。シートの製作を始める |
| 7日前まで | シートの納品と貼り付け。走行前の検査を受ける |
| 開始日(原則毎月1日) | 営業運転で走り始める |
出典:宇都宮ライトレール「ラッピング電車のご案内」(2023年9月28日)。
東京都交通局のラッピング都電も、走行開始の基準日は「申込み3か月後の月の1日」とされています(東京都交通局「TOEI AD MEDIA GUIDE 2026」)。鹿児島市交通局でも、交通局がデザインを承認したあと、市の景観の担当部署へ屋外広告物の許可申請が必要とされています。

注意したいのは、期間中に毎日走るとは限らない点です。宇都宮ライトレールの案内では、洗車、定期検査、故障、天災、事故などで、その車両が運行しない日があり、最低の運行回数は保証しないとされています。東京都交通局の資料にも、故障や事故、整備などで運行が変わったり止まったりする場合があると書かれています。
申し込みの流れは、交通広告全体の手順をまとめた交通広告の出し方もあわせてご覧ください。
車内の広告と組み合わせて1両を独占する
車体のラッピングに、車内の広告を組み合わせる方法もあります。外を歩く人には車体で、乗っている人には車内のポスターで、同じメッセージを届けられます。
東京都交通局では、ラッピング都電(8500形車両)を申し込んだ場合に限り、車内の中づりポスター8枚(B3)とまど上ポスター25枚をまとめて使う「広告貸切電車」をオプションで申し込めます。料金は1台1か月100,000円(税抜、取付作業料込み・制作料別)です。
また、昭和初期の東京市電をイメージしたレトロ車両(9000形)では、車内のまど上ポスターを独占する広告貸切電車があり、1か月150,000円、6か月750,000円、1年1,500,000円(税抜)です(東京都交通局「TOEI AD MEDIA GUIDE 2026」)。
車内の広告の種類やサイズは、電車の車内広告の種類でくわしく解説しています。
ラッピング電車が向いている使い方と、効果の確かめ方
ラッピング電車は、決まった地域をくり返し走りながら、大きな面で目に入る媒体です。次のような目的に向いています。
・沿線の店舗・施設の認知:店舗や施設の近くを走る路線で、地域の人に名前を覚えてもらう
・地域で長く親しまれる企業イメージ:1年単位で走らせ、地元の会社として名前を見てもらう
・自治体・団体のお知らせ:観光、交通安全、イベントなど、地域全体に向けた告知
媒体資料にも、向いている広告主の傾向が書かれています。東京都交通局はラッピング都電を「地域に密着した沿線企業を中心に、高齢者向けに訴求したいサービスとの相性が抜群」と紹介しています。鹿児島市交通局は、広告電車の出稿の多い業種として官公庁、不動産事業者、医療機関を挙げています。

効果の確かめ方。ラッピング電車は、見た人の数を直接数えることがむずかしい媒体です。そのため、走らせる前と走らせている期間で、社名や商品名の検索数、サイトへのアクセス、来店や問い合わせの数を比べます。来店時のアンケートで「何で知ったか」を聞く方法や、車体に「〇〇で検索」と入れて、その言葉の検索数を見る方法もあります。比べる数字は、走らせる前から記録しておきます。
ほかの交通広告と組み合わせる場合の考え方は、交通広告の種類と選び方をご覧ください。
よくある質問
Q. ラッピング電車は、1か月だけでも出せますか?
事業者によります。東京都交通局のラッピング都電は1か月または1年、宇都宮ライトレールは1か月から36か月まで月単位で契約できます。鹿児島市交通局の広告電車は年額の料金ですが、3か月からの掲出もできると案内されています。ただし、1か月だけでも制作費や施工費はかかるため、期間が短いほど、広告料金に対する制作・施工の費用の割合が大きくなります。
Q. 申し込みから走り始めるまで、どのくらいかかりますか?
3か月ほどを見込みます。東京都交通局のラッピング都電は「申込み3か月後の月の1日」が走行開始の基準日です。宇都宮ライトレールも、開始希望日の3か月前までに申請書とデザイン案を出す流れです。デザインの審査や自治体の許可で修正が出ることもあるため、余裕をもって準備します。
Q. 車体の全部を広告にできますか?
できないことが多いです。東京都交通局のラッピング都電は、広告の面積が車体の底を除く全体の10分の3以下です。鹿児島市交通局でも、広告表示面積は10分の3、文字やイラストなどは10分の1とされ、窓やドアのガラスには貼れません。
Q. 料金表の金額のほかに、何が必要ですか?
デザインとシートの制作費、貼り付けとはがしの費用がかかります。事業者によっては下地塗装と復元塗装の費用、自治体への許可の手数料も必要です。見積もりを比べるときは、税抜か税込か、どの費用が含まれているかをそろえて比べます。
Q. 首都圏の大手の鉄道会社の電車でも出せますか?
車体の広告を扱っているかどうかは、事業者や路線によってちがいます。料金表を公開していないことが多く、路線、両数、期間、時期によって個別のお見積もりになります。ご希望の路線と時期を伺えば、出せるかどうかと概算を確認します。
まとめ:料金・審査・準備期間をセットで考える
・ラッピング電車は、車体にシートを貼って走らせる広告。沿線の歩行者やドライバーにも届く
・公開料金の例は、1両1か月30万円(税抜)、1編成1か月60万円から(税込)、1両1年277.2万〜333万円(税別)
・制作費、貼り付け・はがしの費用、塗装、許可の手数料が別にかかることがある
・広告の面積は車体の10分の3以下などの決まりがあり、デザインの審査と自治体の許可が必要
・走行開始の3か月前には申し込み、デザイン案をそろえる
交通広告の料金の全体像は交通広告の費用相場、屋外広告の許可のしくみは屋外広告物条例と許可の基本をご覧ください。


