「最近、CMの冒頭に『字幕』のマークを見かけるけれど、あれは何?」
「自社のテレビCMにも字幕を付けたほうがいいのか、費用や手間はどれくらいかかるのか知りたい」
字幕付きCMとは、テレビの字幕機能をONにすると、せりふやナレーションが文字で表示されるCMです。在京キー局5局では、2025年10月の調査でゴールデン帯(19時〜22時)に流れたCMの31.0%が字幕付きでした(字幕付きCM普及推進協議会 2025年11月11日発表)。
この記事では、総合広告代理店フリーザロックエージェントが、字幕付きCMのしくみ、普及の状況、流せる局と枠、作り方の流れ、搬入基準で決まっているルール、費用と依頼のしかたを、公表資料をもとにまとめます。
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字幕付きCMとは|テロップとの違い
字幕付きCMは、「クローズドキャプション(CC)」というしくみで字幕を表示するCMです。字幕のデータを映像に重ねて放送し、テレビやレコーダーの字幕機能をONにした人にだけ字幕が表示されます。字幕機能をONにしていない人には、ふだんどおり字幕のないCMとして見えます。
これに対して、映像に文字を焼き込んで、いつも表示されるようにしたものを「オープンキャプション(OC)」といいます。CMの中に入れるテロップや、映画の字幕がこちらにあたります。

字幕付きCMの多くは、本編の冒頭に「字幕」のロゴを入れています。ロゴは映像に焼き込むため、字幕機能をONにしていない人にも、字幕付きのCMであることが伝わります。ただし、ロゴの表示はルールではなく任意です(字幕付きCM普及推進協議会「字幕付きCMハンドブック」)。
字幕付きCMの普及には、日本アドバタイザーズ協会、日本民間放送連盟(民放連)、日本広告業協会の3団体でつくる「字幕付きCM普及推進協議会」が2014年から取り組んでいます。
字幕付きCMはどれくらい流れているか
字幕付きCM普及推進協議会は、在京キー局5局(TBSテレビ、日本テレビ放送網、テレビ朝日、フジテレビジョン、テレビ東京)で、CM全体の放送時間のうち字幕付きCMが流れた時間の割合を調べています。

| 調査 | 放送割合 | 字幕付きCMの出稿企業数 |
|---|---|---|
| 2023年10月(観測レポート) | 16.7% | 90社 |
| 2024年10月(観測レポート) | 20.0% | 131社 |
| 2025年10月1日〜8日(放送実態調査・全時間帯) | 21.6% | ― |
| 同(ゴールデン帯 19時〜22時) | 31.0% | ― |
出典:字幕付きCM普及推進協議会「字幕付きCM普及状況の観測レポート(2024年10月)」2025年1月、「字幕付きCMの放送実態調査結果について」2025年11月11日。2025年の調査は期間を1週間とし、番宣CMを除く全CMを対象にするなど方法を変えているため、過去の値とは単純に比べられません。
2024年10月のレポートでは、字幕付きCMを出稿した企業の業種として、食品、飲料、薬品、化粧品、自動車、不動産・住宅設備、金融・保険、流通・小売、外食・サービス、官公庁・団体など幅広い分野が挙げられています。一部の大手企業だけの取り組みではなくなりつつあります。
広告主が字幕付きCMを検討する理由
字幕付きCMを検討する理由は、大きく2つあります。音が聞こえにくい人にもCMの内容を届けられること、そしてそれが企業の姿勢として伝わることです。

・届く人が広がる:「字幕付きCMハンドブック」は、耳が遠い高齢の方を含めると、全国に3,000万人ほどの難聴の方がいると想定されるとしています。総務省の調査研究(平成28年度「CM番組への字幕付与に係る評価、効果等に関する調査研究」)では、難聴を自覚している人は、聞こえる人に比べてテレビ放送の理解度がやや落ちているという結果が出ています。
・企業の姿勢が伝わる:2024年4月から、改正障害者差別解消法の施行により、事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務になりました(内閣府)。なお、日本では字幕付きCMを付けることが法律で義務づけられているわけではありません。だからこそ、自主的な取り組みとして受け止められやすい面があります。
字幕付きCMは音声付きで放送されるため、字幕を付けてもふだんの視聴体験は変わりません。CMの表現そのものを変えずに、届く人を広げられる方法といえます。CMの基本的な考え方はCMの構成の型6選もあわせてご覧ください。
どの局・どの枠で流せるか
字幕付きCMを受け入れる放送局は、この数年で大きく広がりました。
・2022年10月から、民放の地上波で、ネットタイム枠・ローカルタイム枠・スポット枠のすべての放送枠で字幕付きCMの受け入れが始まりました(字幕付きCM普及推進協議会 説明会資料 2022年8月)。
・2023年2月に字幕付きCMの素材搬入基準が改訂され(2023年4月適用)、BS局や独立局を含む民放連加盟の全局が対応しています(同協議会 セミナー資料 2025年12月)。
・民放連が公表した、ロードマップ対象外の局の対応状況(2025年9月時点)では、テレビCM素材を受け入れていない1社を除き、独立局やBS各社で受け入れが可能となっています。一部の番組で受け入れができない局もあります。
また、「字幕付き」と「字幕なし」の2本を用意する必要はありません。字幕付きの素材だけを納品すれば、字幕を表示するかどうかは見る人が選べます。BS局の一部を除き、すべての局・すべてのCM枠で放送できる状況です(同協議会 セミナー資料 2025年12月)。BS・CSでの進め方はBS・CS CMの始め方で解説しています。
字幕付きCMの作り方と流れ
字幕付きCMは、CM本編の編集と音の仕上げ(MA)が終わった後に、字幕の付与に対応したポストプロダクション(編集・仕上げの専門会社)で作ります。字幕のデータは、一般的な映像編集ソフトではなく、専用の字幕編集ソフトで作ります。

「字幕付きCMハンドブック」によると、用意する素材は次の3つです。
・元素材(原版、原版のコピー、原版に準じる品質の動画など)
・カット表やナレーション原稿など、音声の内容が分かる資料
・クレジットに記載する10桁CMコードとCM素材名
字幕付きCMは、元のCMとは別のCMとして扱います。そのため、元のCMとは別の10桁CMコードと素材名を取る必要があります。
日程の目安は、広告主や広告会社の立ち会い試写がない場合で、制作開始から確認用ファイルが届くまで1日〜中1日程度、確認のOKが出てから原版の作成まで1日〜中1日程度とされています。字幕の編集そのものは最短で当日から中1日ほどでできますが、広告主の確認と放送局の考査の時間を見込んでおく必要があります。本編の編集とMAが終わった段階で、MP4などの動画と音声の資料を先に渡すと、日程を短くしやすくなります(同ハンドブック)。
字幕付与に対応しているポストプロダクションは、協議会のポータルサイトに一覧があり、2025年7月22日時点で16社が掲載されています。本編の編集を担当した会社とは別の会社に、字幕の作業だけを頼むこともできます。CM制作全体の進め方はCM制作の流れと期間をご覧ください。
搬入基準で決まっている主なルール
字幕付きCMは、民放連の「字幕付きCM素材搬入基準」に沿って作る必要があります。広告主が知っておきたい主なルールは次のとおりです。

| ルール | 内容 | 広告主への影響 |
|---|---|---|
| 素材名 | CM素材名の冒頭に【字】と表示するのが原則 | 字幕なしの素材と取り違えにくくなる |
| CMコード | 元のCMとは別の10桁CMコードを取る | 放送の発注で、どちらの素材を流すか指定する |
| 表示できない時間 | 本編の冒頭とラストの各1秒は字幕を表示できない | ラストのひと言は、少し前から字幕を出すことになる |
| 表示の長さ | 1つの字幕は2秒以上表示する | 音声より字幕が先に出たり、遅れたりすることがある |
| 原版の形式 | 放送用のMXFファイルに字幕データを重ねる(ProResには重ねられない) | 字幕付きの原版が、そのまま局へ送る素材になる |
| 文字 | フォントは指定できず、テレビ側の文字で表示。大きさは全角・半角・小型(ルビ用)の3種類 | 文字のデザインで見せる表現はできない |
出典:字幕付きCM普及推進協議会「字幕付きCMハンドブック」、同協議会セミナー資料(2025年12月)。素材の搬入全体の日程はテレビCM放映までの流れと期間で、考査についてはテレビCMの考査とはで解説しています。
字幕の表現の基本
字幕付きCMの字幕は、音の情報を届けるためのものです。そのため、ふつうのテロップとは違う書き方があります。これは搬入基準で決められたルールではなく「一般的な表現のしかた」で、演出の意図によって変えることもできます。

・話す人ごとに色を分ける:主な話し手は黄色、次の話し手は緑またはシアン、それ以外は白が基本です。
・カッコの使い分け:( )は話す人の名前や状況、< >はナレーション、《 》は心の声、「 」は商品名などの強調に使います。
・読点は使わない:「、」の代わりに半角スペースを入れます。
・ルビを付ける:商品名や人名、読みにくい漢字には、読み方を添えることがあります。
・実際の音声だけを字幕にする:字幕付きCMの字幕は音声を文字にしたものなので、「言っていないせりふ」や「鳴っていない音」は表示できません。
・置き場所に注意する:字幕は画面の下の中央が基本ですが、商品カットや注意書きと重なる場合は、位置を検討します。
確認用のファイルで字幕の内容とタイミングを見て、OKか修正かを伝える流れが一般的です。商品名の表記や読み方は、広告主のほうでも確認しておきましょう。
費用の考え方と依頼のしかた
字幕付与の費用は、ポストプロダクションや作業の内容によって違います。ハンドブックでは、制作費は「担当・関与者数と使用機材・スタジオ使用時間に比例する」とされ、文字数の多さで決まるものではないと説明されています。確認のやりとりが多いほど時間がかかるため、資料を先にまとめて渡すことが費用と日程の両方に効きます。
依頼するときは、次の点を最初に決めておきます。
・字幕を付けるかどうか:2018年に広告関連4団体が公表した「広告制作における受発注ガイドライン」にもとづく確認書で、字幕付きCMの制作の有無を確認するよう、ハンドブックでもすすめられています。企画の段階で決めておくと、日程に組み込みやすくなります。
・誰が字幕の作業を手配するか:CM制作会社にまとめて頼むか、広告会社が字幕対応のポストプロダクションに直接頼むかを決めます。
・CMコードと搬入の担当:字幕付きの素材のCMコードの取得と、局への搬入を誰が行うかを確認します。
すでに放送しているCMでも、原版や原版に準じる品質の動画があれば、それをもとに字幕付きの素材を作る相談ができます。テレビ用のCMをWeb動画にも使う場合は、無音で見られることを考えたテロップの入れ方も検討しましょう。考え方はテレビCMとWeb動画の作り分けで紹介しています。
字幕付きCMに関するよくある質問
字幕付きCMは、地方のローカル局でも流せますか?
民放連に加盟する地上波の局では、すべての放送枠で受け入れが進んでいます。ただし、局や番組によって扱いが異なる場合があるため、出稿する局ごとに確認してから進めます。
字幕を付けると、CMの見た目は変わりますか?
字幕機能をONにしていない人には、字幕のないCMとして表示されます。冒頭に「字幕」のロゴを入れる場合は、その部分だけ見た目が変わります。ロゴの表示は任意です。
字幕付きと字幕なしの2本を用意する必要はありますか?
必要ありません。字幕付きの素材だけを納品すれば、字幕を表示するかどうかは見る人が選べます。ただし、一部のBS局など例外があるため、出稿先に合わせて確認します。
字幕付きCMを作るのに、どれくらい日数がかかりますか?
字幕の制作と原版の作成は、それぞれ1日〜中1日程度が目安です。これに広告主の確認と、放送局の考査の期間が加わります。本編の完成から放映までの日程に、余裕を持って組み込みましょう。
CMの中のテロップを増やせば、字幕付きCMと同じになりますか?
同じではありません。テロップは映像に焼き込む文字で、見る人が表示を選べません。字幕付きCMは、テレビの字幕機能で表示を切り替えられるクローズドキャプションのCMを指します。
まとめ:字幕付きCMは、表現を変えずに届く人を広げる方法
・字幕付きCMは、テレビの字幕機能をONにすると字幕が表示されるクローズドキャプション(CC)のCM
・在京キー局5局では、2025年10月の調査で全時間帯の21.6%、ゴールデン帯の31.0%が字幕付きCMだった
・民放の地上波では2022年10月からすべての放送枠で受け入れが始まり、字幕付きの素材1本でほぼすべての枠に対応できる
・元のCMとは別の10桁CMコードと素材名を取り、放送用のMXFに字幕を重ねて納品する
・冒頭とラストの1秒は字幕を出せず、1つの字幕は2秒以上表示するなどのルールがある
・企画の段階で字幕の有無と作業の担当を決めておくと、日程と費用を組み込みやすい
フリーザロックエージェントは、テレビCMの企画・制作から考査、CMコードの取得、素材の搬入までをまとめてお引き受けしています。「今のCMに字幕を付けたい」「次のCMは字幕付きで作りたい」といったご相談も、CM制作・動画制作とテレビCMの出稿代行の両面からお手伝いします。


