「広告の運用を社内でやるべきか、外に任せるべきか迷っている」
「インハウス化したいが、人が足りない」
結論から申し上げると、マーケティングのインハウス化(社内で行うこと)と外部委託は、どちらか一方を選ぶものではなく、業務ごとに分けて決めるのが基本です。目的やKPIの決定、予算の判断、データの管理は社内に置き、専門の技術や手間がかかる業務、社内に人がいない業務は外部に任せる、という組み合わせが現実的です。
この記事では、総合広告代理店フリーザロックエージェントが、インハウス化と外部委託の比較、業務ごとの分け方、それぞれが向いている場合と進め方をまとめます。
インハウス化と外部委託の比較
| 比べる点 | インハウス化(社内) | 外部委託 |
|---|---|---|
| 費用 | 人件費、採用・教育の費用、ツールの費用がかかる | 委託費がかかる。必要な期間・範囲だけ頼める |
| スピード | 社内で判断でき、修正が速い | 依頼と確認のやり取りに時間がかかることがある |
| 商品への理解 | 商品やお客様をよく知っている | 最初に情報を伝える手間がかかる |
| 専門の知識 | 身につくまで時間がかかる | 専門の知識や、ほかの業種での経験を使える |
| 客観性 | 社内の事情に引っ張られやすい | 外からの視点で判断しやすい |
| 人の確保 | 退職や異動でノウハウが途切れることがある | 担当が変わっても、会社として引き継げる |
人の確保は、多くの会社で大きな課題です。アドビの調査(2025年5月実施、日本を含む7か国のマーケティング担当者2,835人)では、日本のマーケターが挙げたいちばん大きな課題は「人材不足」で、今後1〜3年でもっとも優先して投資したい対象も「人材確保」でした。
業務ごとに分けて考える
マーケティングの業務は、性質の違う仕事の集まりです。業務ごとに、社内に置くか外に任せるかを決めます。
| 業務 | 社内に置くとよい理由 | 外部に任せるとよい場合 |
|---|---|---|
| 目的・KPI・予算の決定 | 事業の判断そのもの。最終的な決定は社内で行う | 決め方の整理や、根拠の数字づくりを手伝ってもらう |
| データ・アカウントの管理 | 会社の資産。外部の会社が変わっても残るようにする | 設定や集計の作業を任せる |
| WEB広告の運用 | 日々の調整を速く回せる | 専門の知識が必要、運用する人がいない |
| テレビ・新聞・シネアドなどの手配 | — | 媒体社とのやり取りや枠の確保に経験が必要 |
| CM・動画・原稿の制作 | SNSの投稿など、小さく速く作るもの | 撮影や編集など、設備と専門の人が必要なもの |
| 進行管理・取りまとめ | 社内の関係者との調整 | 施策や関わる会社が多く、専任の人がいない |
| 効果測定・レポート | 結果をもとにした判断 | 媒体をまたいで数字をそろえる作業 |
インハウス化が向いている場合
・施策を毎日のように調整する:WEB広告やSNSなど、こまめな改善が成果を左右する施策が中心の場合です。
・商品の知識が成果を左右する:専門的な商品で、外部に説明するより社内で作るほうが早い場合です。
・担当者を育てる余裕がある:経験のある人がいる、または育てる時間と予算がある場合です。
外部委託が向いている場合
・専任の担当者がいない:マーケティングを兼任で担っていて、手が回らない場合です。
・使う媒体が多い:テレビ、新聞、交通広告、WEBなど、媒体ごとに専門の知識が必要な場合です。
・短期間で立ち上げたい:新商品の発売や新しい事業など、人を育てる時間がない場合です。
組み合わせるときは「全体を見る役割」を決める
社内と外部、複数の会社が関わると、それぞれは自分の担当の数字だけを見るようになります。誰も全体を見ていない状態になると、施策どうしのつながりや、予算の配分を判断できません。
そこで、社内か外部のどちらかに、計画・進行・効果測定をまとめて見る役割(PMO)を置きます。社内に専任の人を置けない場合は、外部のマーケティングPMOに任せる方法もあります。弊社のマーケティングPMOは月30万円から(税別)で、支援の範囲や施策の数に応じてお見積もりします(広告の媒体費や制作費は含みません)。
体制のパターン例
社内の人数や施策の数によって、合う体制は変わります。代表的なパターンを挙げます。
| パターン | 社内で行うこと | 外部に任せること | 向いている会社 |
|---|---|---|---|
| 判断だけ社内 | 目的・予算の決定、結果の確認 | 計画、進行管理、運用、制作、レポート | マーケティングの専任者がいない会社 |
| 運用は社内、全体の管理は外部 | WEB広告やSNSの日々の運用 | 計画づくり、マス広告の手配、効果測定の取りまとめ | WEBに強い担当者はいるが、全体を見る人がいない会社 |
| 全体の管理は社内、専門の作業は外部 | 計画、進行管理、効果測定 | 媒体の手配、CM・動画の制作など | マーケティング部門があり、施策の数が多い会社 |
今の体制がどれに近いかを確かめ、足りない役割から外部の力を借りると、無駄な委託を避けられます。
インハウス化を進める手順
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 業務を書き出す | 今のマーケティングの業務を、誰がどれだけの時間で行っているか書き出す |
| 2. 社内に置く業務を決める | 判断にかかわる業務、毎日回す業務から、社内に置くものを決める |
| 3. アカウントとデータを自社の名義にする | 広告の管理画面、解析ツール、制作物のデータの持ち主を自社にする |
| 4. 一部ずつ引き継ぐ | 外部の会社と並行して進め、手順と数字の見方を引き継ぐ |
| 5. 見直す | 数か月ごとに、成果と社内の負担を見て、範囲を調整する |
外部に任せるときの注意点
・範囲を文書にする:どこまでを任せ、どこからが社内の仕事かを、契約や依頼書に書きます。
・データとアカウントは自社に残す:委託先が変わっても、過去のデータや設定が使えるようにします。
・報告の形をそろえる:委託先ごとに報告の形が違うと、比べられません。同じ指標で報告してもらいます。
・丸投げにしない:目的と判断の基準は社内で持ち、定例会で結果を確かめます。
外部の会社を選ぶときのチェックポイント
・目的の数字で話してくれるか:表示回数やクリック数だけでなく、問い合わせや売上など、目的の数字に向けた提案をしてくれるかを確かめます。
・扱える範囲が合っているか:WEBだけ、制作だけなど、得意な範囲は会社によって違います。任せたい業務と合っているかを確かめます。
・報告の形を合わせてくれるか:自社が決めた指標と形式で報告してもらえるかを、契約の前に確かめます。
・担当者と体制が明確か:窓口になる人、実際に作業する人、困ったときに相談できる人がわかるかを確かめます。
・契約の終え方が決まっているか:契約を終えるときに、データや制作物、アカウントをどう引き継ぐかを、最初に決めておきます。
費用を比べるときの考え方
インハウス化と外部委託の費用を比べるときは、目に見える委託費だけでなく、社内でかかる費用もすべて並べます。
| インハウス化でかかる費用 | 外部委託でかかる費用 |
|---|---|
| 担当者の人件費(採用・教育の期間を含む) | 委託費(運用、制作、進行管理など) |
| ツールや設備の費用 | 依頼内容を伝え、確認する社内の時間 |
| 立ち上がるまでの成果の落ち込み | 委託先を切り替えるときの引き継ぎの手間 |
| 担当者が辞めたときの引き継ぎや採用のやり直し | — |
インハウス化は、委託費がなくなる分だけ安くなるように見えます。しかし、担当者が育つまでの期間や、1人に業務が集中したときのリスクも含めて考える必要があります。反対に外部委託でも、社内の確認や判断の時間はゼロにはなりません。
よくある質問
Q. 最初からすべてを社内で行うべきですか?
おすすめしません。まずは目的・KPI・予算の判断と、データの管理を社内に置き、運用や制作は外部と並行しながら、社内で回せる業務を少しずつ増やすほうが、成果を落とさずに進められます。
Q. 外部に任せると、ノウハウが社内に残らないのでは?
定例会で、数字の見方や判断の理由を共有してもらうと、社内にも知識が残ります。報告の形をそろえ、アカウントやデータを自社の名義にしておくことも大切です。
Q. 今の代理店はそのままで、全体の管理だけ頼めますか?
弊社のマーケティングPMOでは、今お付き合いのある代理店や制作会社はそのままに、依頼内容の整理、進行管理、成果の取りまとめをお引き受けしています。
まとめ:業務ごとに分けて、全体を見る役割を決める
・インハウス化と外部委託は、どちらか一方ではなく業務ごとに決める
・目的・KPI・予算の決定と、データ・アカウントの管理は社内に置く
・専任の人がいない、媒体が多い、すぐに立ち上げたい場合は外部委託が向いている
・複数の会社が関わるときは、計画・進行・効果測定をまとめて見る役割(PMO)を決める
外部のPMOの役割はマーケティングPMOとは、複数の会社をまとめて進める方法はマーケティング施策の進行管理のやり方をご覧ください。


