「代理店に提案をお願いしたら、思っていたのと違う案が出てきた」
「RFPやオリエンシートには、何を書けばいいの?」
結論から申し上げると、代理店や制作会社への依頼書には、①目的とKPI、②届けたい人、③伝えたいこと、④予算、⑤スケジュール、⑥出してほしいもの、⑦決め方(評価の基準)を1つの資料にまとめます。複数社を比べるときは「RFP(提案依頼書)」、依頼先が決まっていて内容を説明するときは「オリエンシート」と呼ぶことが多いですが、書く中身はほぼ同じです。依頼書の質が、提案の質を決めます。
この記事では、総合広告代理店フリーザロックエージェントが、依頼書(RFP・オリエンシート)の作り方を、入れる項目、書き方のポイント、比べ方、発注のときの注意点に分けてまとめます。
RFPとオリエンシートの違い
| RFP(提案依頼書) | オリエンシート | |
|---|---|---|
| 使う場面 | 複数の会社に提案を依頼し、比べて1社を選ぶ | 依頼する会社に、案件の背景と条件を説明する |
| 主な読み手 | 提案を検討している複数の会社 | 依頼先の担当者・制作スタッフ |
| とくに大事な項目 | 評価の基準、提出物、締切 | 目的、伝えたいこと、必須・NGの事項 |
| あわせて行うこと | 説明会や質問の受付 | オリエンテーション(説明の打ち合わせ) |
「オリエン」は、依頼する側が依頼の内容を説明する打ち合わせのことです。オリエンシートはその資料にあたります。
依頼書に入れる10の項目
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 1. 背景 | 会社と商品の紹介、今の状況、なぜ今この依頼をするのか |
| 2. 目的とKPI | 何のための施策か。問い合わせ数、来店数、認知度など、何の数字をどこまで上げたいか |
| 3. 届けたい人 | 年代、性別だけでなく、悩み、生活の様子、今どうやって商品を選んでいるか |
| 4. 伝えたいこと | いちばん伝えたい1つのこと。その根拠(数字、実験の結果、選ばれている理由など) |
| 5. 依頼する範囲 | 企画だけか、制作や媒体の手配まで含むか。社内や他社が担う部分 |
| 6. 予算 | 上限、または幅。媒体費と制作費を含むかどうか |
| 7. スケジュール | 提案の締切、決定の時期、公開・掲載の時期 |
| 8. 必須とNG | 使わなければならないロゴや表記、使えない表現、競合との関係で避けたいこと |
| 9. 出してほしいもの | 企画書、見積もり、スケジュール案、体制、実施後のレポートの形 |
| 10. 決め方 | 何を重視して選ぶか(評価の基準)と、決める人 |
書き方の5つのポイント
目的は数字で書く。「認知を広げたい」だけでは、提案する側は何を目指せばよいか決められません。「発売から3か月で、問い合わせを月100件にしたい」のように、数字と期限を入れます。
届けたい人は、1人の姿が浮かぶまで書く。「30〜40代の女性」より、「共働きで、平日の夜にスマートフォンで買い物をする30代の女性」のほうが、媒体も表現も考えやすくなります。
予算は幅でも伝える。予算を伏せると、各社が想定する規模がばらばらになり、比べられません。「300万〜500万円」のような幅でも、伝えたほうが提案がそろいます。
決まっていないことは、決まっていないと書く。未定の項目を空欄にすると、各社が別々の前提で考えてしまいます。「未定。提案を参考に決めたい」と書いておくと誤解が防げます。
過去の施策と結果を共有する。うまくいったこと、いかなかったことを伝えると、同じ失敗をくり返さない提案になります。
オリエンシートの記入例
地域で展開する住宅会社が、モデルハウスの来場を増やすために依頼する場合の例です。内容は説明のための例です。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 背景 | 新しいモデルハウスを春に公開する。これまでは折込チラシ中心で、30代の来場が少ない |
| 目的とKPI | 公開から3か月で、モデルハウスの来場予約を月60組にする(今は月25組) |
| 届けたい人 | 県内に住む、子どもが小さい共働きの30代夫婦。休日にスマートフォンで住まいの情報を調べている |
| 伝えたいこと | 家事の動線を短くした間取り。共働きでも家事の時間を減らせること |
| 依頼する範囲 | 媒体の計画と手配、広告の制作。予約ページの改修は社内で行う |
| 予算 | 3か月で媒体費・制作費あわせて400万〜600万円 |
| スケジュール | 提案の締切は1月15日、決定は1月末、広告の開始は3月1日 |
| 必須とNG | 会社のロゴと会社名の表記を守る。「日本一」など根拠を示せない表現は使わない |
| 出してほしいもの | 企画書、媒体の計画、見積もり(媒体費と制作費を分ける)、効果の測り方 |
| 決め方 | 評価表で点をつけ、営業部長と社長で決定する |
このように1枚にまとめると、提案する側は「誰に、何を伝えて、何の数字を上げるか」をすぐにつかめます。社内でも、依頼の前に目的や予算の認識がそろっているかを確かめる材料になります。
複数の会社を比べる評価表の例
提案を受けてから基準を考えると、印象の強い案に引っ張られます。依頼書の段階で、評価の項目と重みを決めておきます。項目と重みは説明のための例です。
| 評価の項目 | 見るところ | 重み(例) |
|---|---|---|
| 目的との合い方 | KPIにどうつながるかが説明されているか | 30% |
| 企画・表現 | 届けたい人に伝わる内容か。伝えたいことが1つに絞られているか | 25% |
| 費用 | 予算内か。見積もりの内訳がわかるか | 20% |
| 進め方と体制 | スケジュールに無理がないか。担当者と窓口が明確か | 15% |
| 効果の測り方 | 何をどう測り、どう報告するかが示されているか | 10% |
評価する人が複数いる場合は、それぞれが点をつけてから話し合うと、声の大きい人の意見に流されにくくなります。
依頼書づくりでよくある失敗
・伝えたいことが多すぎる:商品の特長を10個並べると、提案する側はどれを軸にすればよいか決められません。いちばん伝えたいことを1つに絞り、残りは「補足」として分けます。
・社内で目的がそろっていない:営業部は問い合わせ数、広報はイメージ、経営者は売上と、それぞれが別の目的を持ったまま依頼すると、提案を選ぶ段階でもめます。依頼書を作る前に、決める人と目的を確かめます。
・締切が短すぎる:提案の準備期間が短いと、各社は過去の案の使い回しで対応しがちです。内容に見合った準備の期間を取ります。
・決めたあとの情報が足りない:依頼先が決まったあとも、商品の資料、過去の広告、お客様の声などを渡す必要があります。渡せる資料の一覧を作っておくと、制作がすぐに始められます。
発注のときに気をつけること
2026年1月1日から、下請法が改正され、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(取適法)になりました(公正取引委員会)。公正取引委員会の説明資料では、ポスターのデザインや映像などの「情報成果物」の作成の委託も対象に含まれています。資本金や従業員数などの条件に当てはまる取引では、次のようなルールがあります。
・発注内容の明示:作ってもらう内容、代金の額、支払期日などを、書面や電子メールなどで示す
・支払期日:受け取った日から60日以内の、できるだけ短い期間に支払期日を決める
・取引の記録:取引の記録を作り、2年間保存する
・禁止される行為:代金の減額、不当なやり直し、協議に応じない一方的な代金の決定など
自社の取引が対象になるかは、公正取引委員会の資料で確かめるか、専門家にご確認ください。あわせて、制作物の著作権や、ほかの媒体・期間に使い回せるか(二次利用)の条件も、発注の前に決めて書面に残します。
依頼から決定までの流れ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 社内で目的と条件をそろえる | 依頼書を作る前に、決める人と目的・予算・時期を確かめる |
| 2. 依頼書を送る・説明する | 依頼書を送り、オリエンで背景を口頭でも伝える |
| 3. 質問を受け付ける | 各社からの質問と回答は、公平のため全社に共有する |
| 4. 提案を受ける | 提案の発表を受け、評価表で点をつける |
| 5. 決定・発注 | 選んだ会社に発注内容を書面で示し、選ばなかった会社にも結果を伝える |
よくある質問
Q. 何社くらいに提案を依頼すればよいですか?
決まりはありませんが、比べやすさと、各社への説明や評価の手間を考えて、数社に絞るのがおすすめです。依頼する会社が多すぎると、1社ごとの質問への対応や評価に時間がかかり、各社の提案も浅くなりがちです。
Q. 提案を依頼するのに費用はかかりますか?
提案の費用の扱いは会社によって異なります。とくに大がかりな企画や、デザイン・映像の試作を求める場合は、費用の扱いを事前に決めておきます。選ばなかった会社の案を使う場合は、あらためて契約が必要です。
Q. 依頼書は誰が作るべきですか?
目的と予算を決める立場の人が中身を確かめたうえで、担当者がまとめます。社内に専任の担当者がいない場合は、外部のPMOが依頼書づくりから手伝う方法もあります。
Q. 提案を受けたあと、内容を変えてもらうことはできますか?
多くの場合、選んだ会社と打ち合わせを重ねて、提案を実行できる形に整えていきます。大きく方向を変える場合は、費用やスケジュールも変わるため、変える内容と理由を書面で伝えて、見積もりを取り直します。
まとめ:依頼書の質が、提案の質を決める
・依頼書には、目的とKPI、届けたい人、伝えたいこと、予算、スケジュール、出してほしいもの、決め方を入れる
・目的は数字と期限で書き、予算は幅でも伝え、未定のことは未定と書く
・評価の項目と重みは、提案を受ける前に決めておく
・発注のときは、取適法などのルールを確かめ、発注内容や二次利用の条件を書面に残す
複数の会社への依頼内容をそろえて進める方法はマーケティング施策の進行管理のやり方、依頼書づくりから取りまとめまでを任せる方法はマーケティングPMOとはをご覧ください。


