マーケティングのレポート・ダッシュボードの作り方|載せる数字と定義のそろえ方

「代理店ごとにレポートの形が違って、全体の成果がつかめない」

「ダッシュボードを作ったけれど、誰も見ていない」

結論から申し上げると、マーケティングのレポートやダッシュボードは、①誰が何を決めるために見るのかを決める、②目標(KGI)とKPIを中心に数字を絞る、③数字の定義と集め方をそろえる、④定例会で見る仕組みにする、の順で作ります。数字をたくさん並べることより、「目標に対して今どこにいて、次に何をするか」が一目でわかることが大切です。

この記事では、総合広告代理店フリーザロックエージェントが、マーケティングのレポート・ダッシュボードの作り方を、載せる数字、データの集め方、見やすくするコツに分けてまとめます。

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なぜ全体の成果が見えにくいのか

広告の手段が増えるほど、数字は媒体ごと、会社ごとの管理画面やレポートに分かれます。それぞれの数字は正しくても、並べて比べる形になっていないため、全体の成果がつかめません。

アドビの調査(2025年5月実施、日本を含む7か国のマーケティング担当者2,835人)では、日本のマーケターの54%が「ある程度理解しているが、データが手作業でばらばらになり、把握が遅れる」、27%が「どのチャネルが有効か全く把握できていない」と答えています。ニールセン「年次マーケティングレポート2025」(世界のマーケター1,400人への調査)でも、従来型のメディアとデジタルの広告費をまとめて測定できているマーケターは32%でした。

レポートとダッシュボードの違い

レポートダッシュボード
形決まった期間の結果をまとめた資料数字を1画面にまとめ、随時更新される画面
役割結果の理由を説明し、次の打ち手を決める今の状態を素早くつかみ、異常に気づく
見る頻度月1回、四半期ごとなど毎日〜毎週
載せるもの数字、グラフ、考察、次の提案主要な数字とグラフ

どちらか一方ではなく、ダッシュボードで日々の状態を見て、レポートで理由と次の打ち手を話し合う、という使い分けが基本です。

載せる数字は3段に分ける

段数字の例見る人
1. 目標(KGI)売上、新規受注件数、応募数など経営者、責任者
2. KPI問い合わせ数、商談数、来店数、1件あたりの費用などマーケティングの担当者、責任者
3. 施策の数字表示回数、クリック数、サイトの訪問数、反響の電話数など施策の担当者、代理店・制作会社

1枚目(画面のいちばん上)には1と2の段だけを置き、3の段は媒体ごとの詳しいページに分けます。経営者が見る画面に表示回数やクリック数が並んでいると、目標に近づいているのかどうかがわかりません。

作り方の6つのステップ

ステップやること
1. 見る人と目的を決める誰が、何を決めるために見るのかを決める(予算の配分、施策の継続など)
2. 数字を絞る目標とKPIを中心に、1画面に入る数に絞る
3. 定義をそろえる「問い合わせ」に何を含むか、いつの時点で数えるかを文章で決める
4. 集め方を決めるどのツール・記録から、誰が、いつ集めるかを決める
5. 形をつくる目標との差、前月・前年との比較がわかるグラフと表にする
6. 見る場を決める定例会の議題に組み込み、見て決める流れにする

指標の定義書を作る

ステップ3の「定義をそろえる」は、もっとも見落とされやすい作業です。指標ごとに次のような定義書を作り、関係者全員で共有します。内容は説明のための例です。

指標定義データの出どころ集める人・時期
問い合わせ数フォームの送信と電話の合計。資料請求は含めない。重複と営業の電話は除くフォームの記録、電話の記録マーケティング担当・毎週月曜
商談数問い合わせのうち、営業が訪問またはオンラインで面談した数営業の管理表営業担当・毎週月曜
1件あたりの費用その月の媒体費と制作費の合計 ÷ 問い合わせ数請求書、上の問い合わせ数マーケティング担当・月初
指名検索の数社名と主な商品名での検索の回数検索の分析ツールマーケティング担当・月初

定義書があれば、担当者が代わっても同じ数え方を続けられます。数字が急に変わったときも、「数え方が変わったのか、実際に変わったのか」を確かめられます。

データの集め方

データ主な集め方注意点
WEBサイトの訪問・問い合わせアクセス解析ツール媒体ごとにURLに目印(パラメータ)をつけて、どこから来たかを分ける
WEB広告の成果各広告の管理画面媒体ごとに「成果」の数え方が違うため、解析ツールの数字とそろえる
電話の問い合わせ媒体ごとの専用番号、通話の記録番号を媒体ごとに分けないと、きっかけがわからない
商談・受注営業の管理表、顧客管理のツール問い合わせのきっかけの媒体を、受注まで引き継いで記録する
テレビ・新聞・シネアドなど掲載・放送の記録、指名検索の数、「何で知りましたか」の回答出稿した期間を、ほかの数字と同じ表に記録しておく

最初からすべてを自動で集めようとすると、準備に時間がかかります。まずは表計算ソフトで手作業でも集め、続けて見る数字が固まってから、自動化を進めるのが現実的です。

見やすくする5つのコツ

・目標との差を必ず書く:実績の数字だけでなく、目標に対して何%か、あといくつ足りないかを示します。

・比べる相手を決める:前月、前年の同じ月、目標のどれと比べるかを固定します。毎回変えると、よくなったのか悪くなったのかがわかりません。

・出稿の時期を書き込む:グラフに「テレビCM放送」「新聞掲載」などの時期を書き込むと、数字の変化と施策の関係が見えます。

・色の意味をそろえる:目標を下回る数字だけ色を変えるなど、色の使い方を決めておきます。

・1つの数字に1人の担当:数字ごとに、説明と改善を担う人を決めておきます。

1枚目のレイアウト例

経営者と責任者が月1回見るダッシュボードの、1枚目の構成例です。内容は説明のための例です。

位置載せるもの形
いちばん上目標(KGI)の実績、目標に対する達成率、前年同月との比較大きな数字と、達成率の棒
2段目主要なKPI(問い合わせ数、商談数、受注数)の月ごとの推移折れ線グラフ。目標の線を重ねる
3段目媒体ごとの費用と、問い合わせ1件あたりの費用表。目標を超えたものだけ色を変える
いちばん下今月の主な施策の予定と、出稿した期間短い一覧

2枚目以降に、媒体ごとの詳しい数字(表示回数、クリック数、地域別の数字など)を置きます。見る人が知りたいことの順に並べると、会議の時間も短くなります。

定例会でのレポートの使い方

レポートは、会議で次の打ち手を決めるための資料です。次の順番で使うと、話がそれにくくなります。

・1. 目標との差を確かめる:目標に対して足りているか、足りないならどの数字かを最初に確かめます。

・2. 理由を話し合う:足りない数字について、施策の担当者や依頼先から理由を聞きます。

・3. 打ち手を決める:誰が、いつまでに、何をするかを決め、次回のレポートで結果を確かめます。

・4. 予算の配分を見直す:1件あたりの費用を比べ、効いている施策に予算を移すかを判断します。

考察の書き方

レポートでいちばん価値があるのは、数字そのものより「なぜそうなったか」と「次に何をするか」です。考察は、次の3つの文で書くと伝わりやすくなります。

・事実:「問い合わせ数は目標120件に対して95件(79%)。前月より10件減った」

・理由:「検索広告からの問い合わせは横ばい。新聞広告を出さなかったため、社名での検索が前月より減っている」

・次の打ち手:「来月は新聞広告を再開し、掲載日の前後で社名での検索と問い合わせの変化を確かめる」

理由がはっきりしない場合は、「わからない」と書き、確かめる方法を次の打ち手に入れます。推測で理由を決めつけると、誤った判断につながります。数字は説明のための例です。

よくある失敗

・数字が多すぎる:取れる数字をすべて載せると、大事な変化が埋もれます。

・見る場がない:ダッシュボードを作っても、会議で見なければ使われません。定例会の最初に見る、と決めます。

・定義が人によって違う:同じ「問い合わせ」でも、部署や会社によって数え方が違うと、議論がかみ合いません。

・考察がない:数字の羅列だけでは、次に何をするかが決まりません。レポートには「なぜそうなったか」と「次に何をするか」を必ず書きます。

よくある質問

Q. ダッシュボードを作るのに、専用のツールは必要ですか?

最初は表計算ソフトで十分です。見る数字と定義が固まり、毎月の集計の手間が大きくなってから、データを自動で集めて表示するツールを検討します。

Q. 代理店ごとにレポートの形が違います。どうそろえればよいですか?

自社で「この指標を、この定義で、この形で報告してほしい」というひな形を作り、各社に共有します。各社のレポートはそのまま受け取り、共通の指標だけを1つの表に集めるやり方もあります。

Q. どのくらいの頻度で更新すればよいですか?

見る人と決める内容に合わせます。WEB広告の運用など日々調整する施策は毎日〜毎週、予算の配分を決めるレポートは月1回、目標の見直しは四半期ごと、という分け方がおすすめです。

まとめ:目標に対する今の位置と、次の打ち手がわかる形に

・レポートは理由と次の打ち手を決める資料、ダッシュボードは今の状態を素早くつかむ画面

・数字は「目標・KPI・施策の数字」の3段に分け、1枚目には目標とKPIだけを置く

・数字の定義と集め方をそろえ、まずは手作業でも続けられる形から始める

・目標との差、比べる相手、出稿の時期を示し、定例会で見て決める流れにする

媒体ごとの数字を同じ物差しにそろえる方法は広告の効果測定のやり方、定例会の回し方はマーケティング施策の進行管理のやり方をご覧ください。

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