「CMの撮影は、ロケとスタジオのどちらがいいの?」
「撮影の日までに、発注する側は何を準備すればいいの?」
結論から申し上げると、撮影場所は「見せたい世界をどこまで作り込むか」と「天気や許可など、当日の不確かさをどこまで受け入れるか」で選びます。スタジオは条件をコントロールしやすく、ロケ(屋外や実在の場所での撮影)は本物の空気感が出せます。どちらの場合も、撮影日の前に許可・出演者・小道具・雨天の対応を決めておくことが、撮影を1日で終える鍵です。
この記事では、総合広告代理店フリーザロックエージェントが、CM撮影の準備の流れ、ロケとスタジオの違い、ロケで必要になる主な許可、撮影当日までに発注側が準備することをまとめます。
CM撮影の準備期間の目安
フリーザロックエージェントの制作の流れでは、絵コンテが決まったあと、出演者・ロケ地・スタッフ・機材を手配する「撮影・制作準備」に3週間ほどを見込みます。撮影そのものは1日が基本です。
準備の期間には、主に次のことを進めます。
| 準備すること | 内容 |
|---|---|
| キャスティング | 出演者の候補を出し、オーディションや資料で決める |
| ロケハン・スタジオ選び | 撮影場所の下見をして、絵コンテどおりに撮れるか確かめる |
| 許可の申請 | 道路、公園、施設、ドローンなど、必要な許可を取る |
| 美術・小道具・衣装 | セット、小道具、衣装、ヘアメイクを用意する |
| スタッフ・機材の手配 | カメラ、照明、音声などのスタッフと機材を決める |
| 香盤表の作成 | 撮影の順番と時間割、集合場所、連絡先をまとめた表をつくる |
| PPM(撮影前の打ち合わせ) | 発注側と制作側で、出演者、衣装、小道具、撮影の段取りを最終確認する |
ロケとスタジオの違い
| スタジオ撮影 | ロケ撮影 | |
|---|---|---|
| 向いているCM | 商品をきれいに見せるCM、白い背景や作り込んだセットのCM、合成を使うCM | 街や自然、実際の店舗・工場・住まいなど、本物の空気感を見せたいCM |
| 天気の影響 | 受けない | 受ける。雨の日の予備日や代わりの案が必要 |
| 光と音 | 照明や音をコントロールしやすい | 太陽の向きや周りの音に左右される |
| 許可 | スタジオの予約のみで済むことが多い | 場所の管理者や警察などの許可が必要なことがある |
| 費用の主な内訳 | スタジオ代、セットや美術の費用 | 場所の使用料、移動の車両、人の整理をするスタッフ、予備日の確保 |
どちらが安いかは、内容によって変わります。たとえば、自社の店舗や工場で撮影すれば場所代はかかりませんが、営業時間外の撮影や、従業員の方の立ち会いが必要になります。見積もりの項目はCM制作の費用相場で紹介しています。
スタジオを選ぶときのポイント
スタジオにも、いろいろな種類があります。絵コンテの内容に合わせて選びます。
| スタジオの種類 | 特徴 | 向いている撮影 |
|---|---|---|
| 白ホリ(白い背景のスタジオ) | 床と壁が白くつながっていて、背景を感じさせない | 商品や人物をすっきり見せるカット |
| グリーンバック | 緑色の背景を、編集で別の映像に置きかえる | CGや別の風景と合成するカット |
| ハウススタジオ | 一般の家やお店のような部屋を、撮影用に貸し出している | キッチン、リビング、オフィスなど生活の場面 |
| セットを建てる大きなスタジオ | 美術スタッフが、場面に合わせたセットを作る | 世界観を作り込みたいCM |
広さ、天井の高さ、駐車場、控室、使える時間、電源の容量なども、スタッフの人数や機材によって確認が必要です。
ロケで必要になる主な許可
屋外や他人の施設で撮影するときは、場所に応じた許可が必要です。許可が取れていないと、当日に撮影を止められることもあります。
道路での撮影。道路で撮影する場合は、道路交通法第77条にもとづく「道路使用許可」を、その場所を管轄する警察署に申請します。たとえば東京都港区は、道路上での撮影について「道路上にものを設置しないことを条件に、所轄警察署の交通課で道路使用許可を取った後、撮影が可能」と案内しています。機材を道路に置く場合などは、道路の管理者の許可(道路占用許可)が必要になることもあります。
公共の施設や公園での撮影。施設の管理者に申し込みます。東京都では「東京ロケーションボックス」が、都立施設でのロケ撮影の申し込みを受け付け、施設の管理者と調整する窓口になっています。都の資料(2009年4月)では、申請から許可の決定までの標準の処理期間を2週間としています。ほかの地域でも、自治体などが「フィルムコミッション」という撮影の支援窓口を設けていることがあります。
ドローンでの撮影。国土交通省によると、2022年6月20日から、重さ100g以上の無人航空機(ドローン)は機体の登録が義務になっています。さらに、人口が集中している地区の上空、夜間、目で見えない範囲、人や物から30m未満での飛行などは、国の許可・承認が必要です。国土交通省は、飛行開始予定日の少なくとも10開庁日前までに申請するよう定め、3〜4週間ほど余裕をもった申請を呼びかけています。
お店や個人の家での撮影。持ち主の許可を取り、撮影する範囲、時間、映ってよいもの(看板、ほかの会社のロゴ、表札など)を事前に決めます。
撮影に写り込むものにも注意
ロケでは、意図しないものが映像に入ることがあります。
・通行人:顔がはっきり分かる形で映り込んだ場合は、撮影の許可をもらうか、映らないように撮る・編集でぼかすなどの対応をします。
・ほかの会社の商品やロゴ:看板や商品のパッケージは、映らないように配置を変えたり、編集で処理したりします。
・建物や美術作品:特徴のある建物や作品を大きく映す場合は、持ち主や管理者に確認します。
肖像権や著作権の基本は広告の表現で注意したい法律と権利でまとめています。
発注する側が準備すること
| 時期 | 準備すること |
|---|---|
| 撮影場所を決める前 | 自社の店舗・工場・オフィスで撮る場合、撮影できる日時と範囲を社内で確認する |
| 撮影の2〜3週間前 | 撮影に使う商品、パッケージ、制服、ロゴの最新データを用意する |
| PPMまで | 出演者、衣装、小道具、セリフの最終確認。社内で確認する人に共有する |
| 撮影の前日まで | 当日立ち会う人、決裁できる人、連絡先を決める。社員が出演する場合は本人の同意を書面でもらう |
| 撮影当日 | モニターで映像を確認し、気になる点はその場で監督かプロデューサーに伝える |
撮影の当日に、新しいカットを足したり、セリフを大きく変えたりすると、時間が足りなくなることがあります。変更したい点は、できるだけPPMまでに伝えてください。
雨や延期に備える
ロケ撮影では、天気の予備日を決めておくのが一般的です。予備日を使った場合に、スタッフや出演者の費用がどうなるかは、見積もりの段階で確認しておきます。
また、屋外のシーンを屋内やスタジオで撮る「雨天の代わりの案」を用意しておくと、放送開始日が決まっているCMでも、スケジュールを守りやすくなります。
撮影の日数を増やさないコツ
1. 撮影場所をまとめる。移動が多いと、そのぶん撮影できる時間が減ります。近い場所でまとめて撮れる構成にします。
2. 尺違いや縦型の分も一緒に撮る。30秒と15秒、横型と縦型の素材を同じ日に撮っておけば、追加の撮影がいりません。
3. 商品だけのカットは別の日やスタジオで。商品のアップ(寄りの映像)は、出演者がいなくても撮れます。出演者のいる時間を有効に使えます。
4. 撮影しない表現も組み合わせる。説明的な部分は、イラストやアニメーション、テロップで見せる方法もあります。
撮影当日の流れ(例)
撮影の日は、香盤表にそって進めます。1日の撮影の流れの例です。
| 時間の目安 | 内容 |
|---|---|
| 朝 | スタッフの集合、機材とセットの準備。出演者のヘアメイクと衣装 |
| 午前 | リハーサル(本番前の練習)のあと、本番の撮影。光の条件が大切なカットから撮ることが多い |
| 昼 | 休憩。午前の映像をモニターで確認する |
| 午後 | 残りのカット、商品のアップ、縦型や尺違い用のカット、写真の撮影 |
| 終わり | 撮り忘れがないか絵コンテと照らし合わせて確認し、片づけ(撤収) |
撮影の順番は、絵コンテの順番どおりではありません。同じ場所や同じ照明で撮るカットをまとめて撮るため、物語の最後の場面を先に撮ることもあります。
よくある疑問
Q. 撮影に立ち会う必要はありますか?
必須ではありませんが、おすすめします。その場で映像を確認できれば、商品の向きや表情など、細かい点をすぐに直せます。立ち会う方には、その場で判断できる方をお願いしています。
Q. 自社の店舗で撮影するとき、営業中でも撮れますか?
撮れる場合もありますが、お客様が映り込んだり、営業の妨げになったりするため、定休日や営業時間外をおすすめしています。
Q. 天気が悪いときは、だれが中止を決めますか?
前日などに、天気予報をもとに、制作側と発注側で相談して決めます。判断する時間と連絡の方法を、事前に決めておきます。
まとめ:場所選びと許可と予備日で、撮影は決まる
・スタジオは条件をコントロールしやすく、ロケは本物の空気感を出せる
・道路は警察署の道路使用許可、公共の施設は管理者の許可、ドローンは機体登録と国の許可・承認が必要になることがある
・発注側は、自社での撮影の調整、商品やロゴの準備、立ち会う人と決裁できる人を決めておく
・雨の予備日と代わりの案を用意し、尺違いや縦型も同じ日に撮る
撮影までの全体の流れはCM制作の流れと期間、撮影した素材をWebでも使う方法はテレビCMとWeb動画の作り分けをご覧ください。


