「テレビCMを出したいのですが、いつから動けば希望日に間に合いますか?」
「調べたら『だいたい3ヶ月』と書いてあったけれど、その3ヶ月の中身が分からない……」
結論から申し上げると、テレビCMの流れと期間を「約3ヶ月」で丸めてはいけません。工程ごとに日数のレンジがあり、いちばん幅が大きいのは撮影ではなく考査で、いちばん事故が起きるのは素材搬入の締切です。同じ「テレビCM」でも、既存素材を取引のある局に出すなら最短1週間、初めて取引する局に新規制作で出すなら3ヶ月を超えることがあります。
この記事では、総合広告代理店フリーザロックエージェントが、テレビCM放映までの流れ、工程ごとの所要日数、放映希望日から引く逆算スケジュール表、考査で改稿が出たときのバッファの取り方まで、プロの視点で徹底解説します。読み終えたら、自社のカレンダーに「今日から動けばいつ放映できるか」を書き込める状態を目指します。
テレビCM放映までの流れは6工程|「全体で約3ヶ月」で丸めると事故が起きる
まず全体像です。放送局が広告主向けに公開している手続き案内を並べると、テレビCMの流れはおおむね次の順序になります。
- ① CM枠の検討(タイム/スポット/SASなど、どう買うかを決める)
- ② 業態考査(その局で初めて出稿する広告主が対象)
- ③ CM素材の準備(企画・絵コンテ・撮影・編集・MA)
- ④ CM素材考査=表現考査(その局で放送実績のない素材が対象)
- ⑤ CM枠の正式発注(枠がここで確定する)
- ⑥ 素材搬入・CM進行業務 → 放送
テレビ東京の「テレビCMの実施手続き例」では、①CM枠検討/②業態審査/③CM素材の準備/④CM内容考査/⑤CM枠の正式発注/⑥CM素材搬入/⑦CM進行業務/⑧放送、という8段階で案内されています(見出しに「例」と付されているとおり、固定の手順ではなく一例です)。BSフジの営業向けサイトでも、I CM枠の検討→II 業態審査(考査)→III CM枠決定→IV CM素材準備→V CM考査→VI CM素材等の搬入→VII 放送→VIII 放送後、という8段階のフローが公開されています。
ここで見落とされやすいのが、枠が正式に決まるのは考査の「後」だという点です。
テレビ東京は「CM枠の選定、業態審査、CM内容考査を経て、CM枠が正式決定となります」と明記しています。つまり「枠を押さえてから、余った時間で考査を通す」という段取りは、そもそも公式のフローと逆向きです。逆算表を作るときは、この順序を崩さないことが前提になります。
そして、多くの記事が書いている「全体で約3ヶ月」という数字は、工程の合計ではなく、ある条件での一例にすぎません。実際には次のように振れます。
静岡朝日テレビは広告主向けのQ&Aで、「すでに動画素材のご用意がある場合は、最短1週間後の放送が可能」「初めてご出稿いただく場合、業態考査やCM制作に1ヶ月程度、お時間を頂きます」と公表しています。一方で、静岡新聞SBSグループの広告会社・SBSプロモーションのオウンドメディアは、業界一般の目安として業態考査に2週間〜3ヶ月、初回は3ヶ月程度かかる場合もあると解説しています(放送局の公表値ではありません)。同じ工程でも、条件で数倍変わるということです。
テレビCMの流れは大きく6工程。枠が確定するのは考査の後であり、「約3ヶ月」という一つの数字ではなく、工程ごとに日数のレンジを置いて考える必要があります。
【逆算表】放映希望日をD-dayに置いたテレビCMのスケジュール
ここからが本題です。放映開始希望日を「D-day」として、そこから逆に引いていきます。下の表は最も時間がかかるケース、つまり「初めて取引する地上波局に、新規制作のCMを出す」場合を想定しています。既に取引がある局や、既存素材をそのまま使う場合は後述のとおり短くなります。
| タイミング | この日までにやること | 根拠・出典 |
|---|---|---|
| D-90(約3ヶ月前) | 初めて取引する局への業態考査の申請書類を揃えて提出(書類の内訳は考査の記事を参照)。並行して自社の広告事業者コードの有無を確認 | 静岡新聞SBSグループの広告会社・SBSプロモーションのオウンドメディアが、業界一般の目安として業態考査2週間〜3ヶ月、初回は3ヶ月程度かかる場合もあると解説(放送局の公表値ではありません) |
| D-75(約2.5ヶ月前) | 企画・絵コンテ・ナレーション原稿を文字にして確定させる | 当社(フリーザロックエージェント)が実務で使っている目安 |
| D-60(約2ヶ月前) | 絵コンテとナレーション原稿の段階で表現考査を先行させる。広告事業者コードが未取得なら共通コード管理センターへ申請 | 素材考査は絵コンテ・仮編集段階と本編集完成後の2回に分かれる(BSフジ運営のSales Guideブログ)/コード発番は2〜3営業日かかることも(共通コード管理センター) |
| D-45(約1.5ヶ月前) | 撮影・編集・MA。並行して局・枠・エリアの候補を詰める | 当社が実務で使っている目安 |
| D-30(約1ヶ月前) | 完成尺(完パケ)を提出して最終考査へ。考査の受理を前提に枠を正式発注 | 枠は考査を経て正式決定(テレビ東京)/枠取り開始が放送開始月の1ヶ月前という局もある(JCOM BS) |
| D-14(2週間前) | 考査結果を受け取り、改稿があればここから対応に入る。放映日の変更を無償で判断できる最終ライン | 放送開始日の2週間前からキャンセル料が発生すると公表する局もある(静岡朝日テレビ) |
| D-14前後(放送の10営業日前) | タイム(番組提供)の場合、提供クレジットの清刷り・アナウンスコメント・色指定を提出 | 放送の10営業日前を締切とする局がある(JCOM BS)。10営業日前は暦日でおおむね14日前にあたります |
| D-7(1週間前) | 10桁CMコードを確定し、素材のクレジット・メタデータ・搬入書式(テレビ番組CM連絡表またはテレビスポットCMスケジュール表)を用意 | 10桁CMコードが付番されていない素材は放送できない(テレビCM素材搬入基準) |
| D-4(4日前/局によっては4営業日前=暦日で6日前前後) | 素材搬入締切。土日祝を挟む分は繰り上げる。字幕付き素材や局の運用によってはさらに前 | 搬入締切は「放送日を含まない4日前まで」(民放連・日本広告業協会「テレビCM素材搬入基準」【2023年2月改訂版】)。BS11は4営業日前、JCOM BSは短尺CMで5営業日前・インフォメーション枠で9営業日前と、局によって単位も日数も異なります |
| D-day | 放映開始 | ― |
この表の左端に置くのは、撮影ではなく業態考査の申請日です。
撮影日が動かせないという相談は多いのですが、撮影は自社と制作チームの都合で前後させられます。対して考査は放送局の判断であり、こちらの都合で短縮できません。逆算のいちばん左に置くべきは、自分でコントロールできない工程です。
なお、上の表で「当社が実務で使っている目安」と書いた行は、放送局が公表している数字ではありません。制作の日数は企画の内容・出演者の有無・ロケの規模で大きく変わるため、公表値としては存在しないのが実情です。逆に「D-4」のような搬入締切は基準に明記されているので、こちらは動かせない固定点として扱ってください。
もう一点、単位に注意してください。この表の見出しは暦日ベースの「D-◯」で並べていますが、根拠の側は「◯営業日前」と規定されている項目が混じっています(提供クレジットの10営業日前、BS11の4営業日前、JCOM BSの5営業日前・9営業日前など)。営業日規定は土日祝の入り方で暦日換算が変わるため、表では暦日換算を併記しています。実際のカレンダーで必ず数え直してください。
放映希望日をD-dayに置き、D-90(業態考査の申請)からD-4(素材搬入締切)までを固定点と可変点に分けて並べます。固定点は考査と搬入、可変点は制作です。
工程ごとの所要日数|局が公表している数字と、公表がない部分
逆算表の根拠になる日数を、工程別に整理します。出典があるものと、当社の実務目安を分けて記載しています。出典があるものについても、放送局が公式資料で公表している数字と、事業者がブログ・オウンドメディアで解説している業界一般論とは区別しています。
| 工程 | 所要日数の目安 | 出典・扱い |
|---|---|---|
| 業態考査(その局で初出稿の場合) | 5営業日〜3ヶ月 | BSフジの公式「CM放送までの手引き」は「業態審査には、一般的に5営業日ほど要します」と記載。静岡新聞SBSグループの広告会社・SBSプロモーションのオウンドメディアは、業界一般の目安として業態考査2週間〜3ヶ月、初回は3ヶ月程度かかる場合もあると解説(放送局の公表値ではありません) |
| CM素材考査(表現考査) | 中3営業日〜1〜2ヶ月 | BSフジの公式「CM放送までの手引き」は「審査は、一般的に5営業日を要します」と記載。JCOM BSは300秒以下で中3営業日、14分以上で中5営業日と公表。一方、同じBSフジ運営のSales Guideブログには一般に1週間から1〜2か月という別の記載があり、同一ドメイン内で数字が異なります |
| 広告事業者コード(10桁CMコードの頭4桁)の発番 | 数日。2〜3営業日かかることもある | 共通コード管理センターが公式に案内。発番は無料、緊急の発番依頼は受け付けないと明記 |
| 企画・絵コンテ・ナレーション原稿の確定 | 2〜3週間 | 当社が実務で使っている目安(公表値なし) |
| 撮影・編集・MA(完パケまで) | 3〜6週間 | 当社が実務で使っている目安(公表値なし) |
| 枠取り〜正式発注 | 放送開始月の1ヶ月前から動くのが一例 | JCOM BSは枠取り開始を放送開始月の1ヶ月前、タイムの決定連絡を原則前月5日と公表。局により異なる |
| 素材搬入 | 放送日を含まない4日前まで | 民放連・日本広告業協会「テレビCM素材搬入基準」【2023年2月改訂版】(2023年4月1日適用) |
考査の日数は「局が公表していればそれに従い、公表がなければ幅を置く」。これが唯一正しい扱いです。
たとえばJCOM BSは、考査に要する期間を素材の尺で切り分けて公表しています。300秒以下なら中3営業日、14分以上なら中5営業日です。BSフジは公式の「CM放送までの手引き」で、業態審査・CM考査ともに一般的に5営業日と案内しています(同社運営のSales Guideブログには1週間〜1〜2か月という別の記載があるため、BSフジの日数を引用する際は出所を必ず確認してください)。一方で、多くの地上波局は日数を公表していません。「業態考査は◯日」という一般則は存在せず、局により幅があるというのが正確な理解です。
在京5局(日本テレビ・テレビ朝日・TBSテレビ・テレビ東京・フジテレビ)のCM素材考査については、一般社団法人テレビCM考査センターが運用するシステム「ICCOU」で一次考査の窓口が一本化され、2026年4月から本運用に入っています。窓口が1つになったことで広告会社側の集約作業は減りますが、センターが標準の処理日数を公表しているわけではありません。
一本化されたのはCM素材考査だけで、業態審査は従来どおり各局に確認が必要です。対象も参加放送局(在京5局)以外は対象外で、公式には「まずは東京エリアからスタートし、順次拡大を検討していく」とされています。「一本化されたから早くなる」という前提で逆算を詰めるのは危険です。考査の中身や必要書類については別記事で詳しく整理しています。
考査の日数を公表している局は限られます。公表があればその日数を、なければレンジを置く。制作の日数は公表値が存在しないため、自社目安として明示的に扱うのが誠実です。
期間が変わる最大の分岐は「その局と初めて取引するか」
同じ企業・同じ素材でも、期間はケースによって大きく変わります。分岐は2つだけです。「その局で初めて出稿するか」と「その局で放送実績のある素材か」です。
| ケース | 必要になる工程 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 初めて取引する局 × 新規制作 | 業態考査+表現考査(絵コンテ段階と完パケ段階の2回)+制作+搬入 | 前章の逆算表どおり。業態考査に時間がかかる局なら3ヶ月でも足りない。なお静岡朝日テレビは初出稿について「業態考査やCM制作に1ヶ月程度」と公表しており、小規模な制作であればこの水準に収まる場合もあります |
| 初めて取引する局 × 既存素材あり | 業態考査+素材考査+搬入 | 業態考査の日数+素材考査の日数+搬入締切分の日数。制作工程がまるごと外れるため、静岡朝日テレビが公表している「業態考査やCM制作に1ヶ月程度」(制作を含む数字)よりは短くなります |
| 既に取引のある局 × 新規素材 | 素材考査+搬入(業態考査は不要になることが多い) | 素材考査の日数(BSフジなら公式手引きで一般的に5営業日)+搬入締切分の日数 |
| 既に取引のある局 × その局で放送実績のある素材 | 搬入・進行のみ | 静岡朝日テレビは素材があれば最短1週間後の放送が可能と公表 |
注意したいのは、素材考査は「その局で放送実績のない素材ごとに毎回」必要になるという点です。
テレビ東京は「当社で放送実績のないCMに関して、CMの内容や表現の確認をさせていただきます」、BSフジは「当社で放送実績のないCMは、事前に……考査させていただきます」と案内しています。つまり業態考査は初回だけで済むことが多い一方、素材考査はCMを作り替えるたびに発生します。15秒版と30秒版を作った場合、テロップだけ差し替えた地域版を作った場合も、それぞれ別素材です。
そして複数局に出す場合、局の数だけ業態考査が並走します。系列局であっても別会社ですから、A局で通ったからB局も同じ日数、とはなりません。全体のスケジュールを決めるのは、いちばん時間がかかる局です。逆算表は「最も遅い局」に合わせて引いてください。
なお、放送局との契約は局と取引のある広告会社を通じて結ぶ形が一般的です。静岡朝日テレビも「CM出稿にかかわるご契約は、弊社とお取引のある広告会社様との間で締結していただきます」と明記しています。初めての局を増やすときは、その局と取引のある会社を挟む時間も逆算に含めておくと安全です。
期間を決める分岐は「その局で初めてか」「その素材はその局で放送実績があるか」の2点。業態考査は初回のみ、素材考査は素材ごとに毎回発生します。複数局なら最も遅い局が全体の律速です。
考査で改稿が出たら何日戻るのか|バッファの積み方
考査の結果は「受理」「改稿」「謝絶」の3つに分かれます。改稿は落ちたわけではなく、通すための調整です。ただしスケジュール上は確実に巻き戻しになります。逆算表を作るなら、ここに何日積むかを決めておかなければ意味がありません。
巻き戻る日数は、直す場所によってまったく違います。完成尺(完パケ)から直すのか、ナレーションの差し替えだけで済むのかで、必要な作業が変わるからです。
| 指摘の種類 | 実際にやり直す作業 | 巻き戻る日数 |
|---|---|---|
| テロップの修正 | テロップ差し替え → 書き出し → メタデータ作り直し → 再考査 | 数日〜1週間(当社目安) |
| 音声(ナレーション)の修正 | ナレーション録り直し → MA → 書き出し → 再考査 | 1〜2週間(当社目安) |
| 映像の修正(カットの差し替え) | 編集のやり直し。既存カットで足りれば撮影は不要 | 2〜4週間(当社目安) |
| 企画の見直し(謝絶を含む) | 企画からの作り直し、または他媒体への振り替え | BSフジ運営のSales Guideブログは、改稿要請による修正で完成まで1〜2ヶ月かかることもあると記載 |
だからこそ、最大のバッファは「絵コンテ段階の考査」です。
BSフジ運営のSales Guideブログは「まず、絵コンテや仮編集段階での考査があり、本編集完成後には、再び考査が行われます」と説明しています(同社の正式な「CM放送までの手引き」には記載のない情報です)。表現考査は2段構えで受けられるのです。絵コンテとナレーション原稿の段階で指摘を受けておけば、直すのは紙とテキストだけです。完成尺から同じ指摘を受けると、映像・テロップ・音声の3つを直すことになります。同じ指摘なのに、コストと日数が一桁変わります。
実務としては、次の5点をスケジュールに書き込んでおくと崩れにくくなります。
- 絵コンテ・ナレーション原稿の段階で必ず一度考査に出す(最大のバッファはここ)
- 完パケ提出から放映開始までを最低2週間空ける
- 改稿1回分として1〜2週間を確保する(当社が実務で使っている目安)
- 複数局に出すなら、最も厳しい局の指摘に合わせて1本にまとめる。局ごとに別バージョンを作るとコードも搬入も本数分に増える
- 素材搬入締切の前日を予備日にしない。土日祝を挟むと締切そのものが繰り上がる
静岡朝日テレビは「CM放送に関わる料金については、放送開始日の2週間前から弊社規定によるキャンセル料が発生致します」と公表しています。改稿が間に合わないと判断するなら、その判断は2週間前より前に済ませたいところです。放映日をずらす決断も、早ければ費用が発生しません。
改稿の巻き戻しはテロップ修正なら数日、映像差し替えなら2〜4週間、根幹への指摘なら1〜2ヶ月に及びます。バッファは日数で積むより、絵コンテ段階の考査という工程で積むほうが効果的です。
素材搬入締切の実務|「放送日を含まない4日前」は土日祝で繰り上がる
初出稿でもっとも事故が起きるのがこの工程です。民放連(一般社団法人日本民間放送連盟)と日本広告業協会が定める「テレビCM素材搬入基準」は、CM素材の搬入締切を放送日を含まない4日前までと定めています。現行版は【2023年2月改訂版】で、2023年4月1日から適用されています(2022年7月改訂版は旧版で、民放連サイトからは削除済みです。2024年以降にテレビ版の改訂は行われていません)。テレビ東京の広告会社向けマニュアルでも「原則として『放送日を含まない4日前まで』にCM素材を納品してください。土・日・祝日をはさむ場合は、その日数分だけ繰り上げます」と同じ内容が案内されています。
搬入基準には、締切の曜日と放送される曜日の対応表まで載っています。数え方でつまずきやすいので、そのまま引用します。
| 搬入締切となる曜日 | その素材が放送される曜日 |
|---|---|
| 月 | 当週の金 |
| 火 | 当週の土/次週の日・月 |
| 水 | 次週の火 |
| 木 | 次週の水 |
| 金 | 次週の木 |
つまり、火曜に搬入した素材は最短でも当週の土曜からしか放送できません。
「4日前」を単純に日数で数えると必ず間違えます。加えて、搬入基準には次のような例外・上乗せが書かれています。
- 土・日・祝日をはさむ場合は、その日数分だけ締切が繰り上がる
- 年末年始・ゴールデンウィークなどの搬入については、各社が別途定める
- 物理媒体(XDCAM用プロフェッショナルディスク、P2カード)で搬入する場合、支社・支局は上記締切よりさらに一営業日前に搬入する
- 搬入後の素材変更も、同じ締切に準じる
- 基準自身に「搬入締め切りについては、上記と異なる対応を行う場合があります」と書かれている
最後の一文が重要です。実際の締切は局ごとに違います。公表されているものを並べると、こうなります。
| 局・枠 | 公表されている搬入締切 | 備考 |
|---|---|---|
| 民放連・日本広告業協会の搬入基準(標準) | 放送日を含まない4日前まで | 土日祝分は繰上げ。物理媒体で支社・支局へ搬入する場合はさらに一営業日前 |
| テレビ東京 | 放送日を含まない4日前まで | 連休や年末年始は上記の限りではないと案内 |
| BS11(日本BS放送) | 放送日を含まない4営業日前まで | 字幕付きCM素材は5営業日前まで。「日」ではなく「営業日」で規定。同PDFには「上記と異なる対応を行う場合があります」「年末年始・ゴールデンウィークは別途」との但し書きもあり、断定的な固定値としては扱えません |
| JCOM BS(インフォメーション枠) | 素材納品は放送開始日の9営業日前15時 | 枠取り開始は放送開始月の1ヶ月前、枠有効期限は11営業日前17時、素材指定も9営業日前15時 |
| JCOM BS(短尺CM) | 素材納品は放送開始日の5営業日前15時 | 枠取り開始は放送開始月の1ヶ月前、枠有効期限は7営業日前17時、素材指定も5営業日前15時 |
「4日前」と「4営業日前」は、連休を挟むと1週間近く差が出ます。JCOM BSのインフォメーション枠のように、素材納品が9営業日前という区分もあります。放映希望日が決まったら、まず出稿する局の実際の締切を確認して、逆算表のD-4を書き換えるのが正しい手順です。
もう一つ、搬入と同じ列で管理すべきものが10桁CMコードです。
搬入基準は「10桁CMコードの付番されていない素材は放送できません」と明記しています。頭4桁が広告事業者コードで、共通コード管理センターに申請して取得します。同センターは「事務局の状況によっては、発番まで2〜3営業日かかることもあります」「緊急の発番依頼は、お引き受けできません」と公式に案内しており、災害等で数日停止する可能性にも触れています。後ろ6桁の素材コードは広告事業者が自主管理します。
搬入基準4.(4)は、次の4つの場合はいずれも「同一のCM素材とはみなさない」としています。①音声モード(モノラル、ステレオ、5.1+S)が異なる場合、②秒数が異なる場合、③スーパー(字幕)の一部が異なる場合、④一部アナウンスコメントが異なるなど、些細でも音声の内容が異なる場合。15秒版と30秒版、テロップだけ変えた地域版、ステレオ版と5.1ch版は、それぞれ別の10桁CMコードが必要で、搬入も別です。一方で、搬入する媒体(回線か物理媒体か)の違いは別素材とはみなされません。本数が増えれば、締切も本数分あります。
搬入締切は基準では「放送日を含まない4日前」ですが、土日祝で繰り上がり、局によっては営業日換算やさらに前倒しになります。10桁CMコードの発番日数も同じ列で管理してください。
繁忙期は逆算が早まる|そして今日から数える3ステップ
ここまでの逆算表は「枠が空いている」という前提で組んでいます。実務ではもう一つ、枠を確保できるかという制約が乗ります。
テレビCMが混み合うのは、年度末の3月、上期末の9月、年末商戦の11〜12月です。逆に緩みやすいのは2月と8月です(時期・局・枠の空き状況により変動します)。繁忙期は希望の時間帯が埋まりやすく、単価も上がります。この時期に放映を狙うなら、考査の日数はそのままに、枠の相談だけをさらに前へずらす必要があります。
枠取りの締切も局によって設計が違います。JCOM BSは枠取り開始を放送開始月の1ヶ月前、枠有効期限を短尺CMで放送開始日の7営業日前17時・インフォメーション枠で11営業日前17時、提供(タイム)の決定連絡を原則放送開始月の前月5日と公表しています。「いつまでに発注すればよいか」も、考査と同じく局ごとに確認すべき固定点です。
では、自社のカレンダーに落とす手順です。次の3ステップで計算できます。
- ステップ1:放映開始希望日をD-dayとしてカレンダーに置く。そこに「この日は動かせるか、動かせないか」を書き添える(新商品の発売日やイベント連動なら動かせない)
- ステップ2:D-4に「素材搬入締切」を置き、土日祝を実際に数えて繰り上げる。そのうえで出稿予定の局に本当の締切を確認し、日付を上書きする。ここが逆算の起点になる固定点です
- ステップ3:搬入締切から逆に、完パケ完成 → 最終考査 → 撮影・編集 → 絵コンテ段階の表現考査 → 企画・絵コンテ → 業態考査の申請、の順に置いていく。初めて取引する局が含まれるなら、業態考査には最長で3ヶ月分の余地を確保する
この計算をして、業態考査の申請日が「今日」より前になっていたら、そのままでは間に合いません。その場合は次のどれかを選ぶことになります。
- 放映開始希望日を後ろへずらす(キャンセル料が発生する前に判断すれば費用は生じません)
- 既存の動画素材を放送の技術仕様に合わせて手直しし、まず出稿する。制作期間をまるごと外せます
- すでに取引のある局から始める。業態考査の分だけ短縮できます
- SAS・運用型のように15秒1枠単位で買える枠を検討する。リードタイムが短い一方、在庫は限られます
- BS・CSを先に立ち上げ、地上波は考査が済んだ次のクールから重ねる
フリーザロックエージェントでは、この逆算を初回のお打ち合わせの場で一緒に引いています。放映希望日を伺った時点で「その日に間に合うか」「間に合わないなら何をどう外すか」をお伝えするほうが、双方にとって早いからです。
繁忙期は3月・9月・11〜12月。枠取りの締切も局ごとに違います。搬入締切を起点に3ステップで逆算し、業態考査の申請日が過去になっていたら、日付か手段のどちらかを変える判断が必要です。
まとめ:テレビCMの流れと期間は『撮影から数えず、考査から数える』
テレビCMの流れと期間について、押さえておきたい点を整理します。
・流れは6工程。枠が正式決定するのは考査の後で、この順序は放送局の公式フローどおり
・「全体で約3ヶ月」は一例。既存素材×取引のある局なら最短1週間、初めての局×新規制作なら3ヶ月でも足りないことがある
・業態考査は初回のみ、素材考査はその局で放送実績のない素材ごとに毎回発生する
・考査の日数を公表している局は限られる。公表があればその数字を、なければ幅を置くのが正しい扱い
・改稿の巻き戻しはテロップ修正なら数日、映像差し替えなら数週間。だから絵コンテ段階の考査が最大のバッファになる
・素材搬入締切は基準では「放送日を含まない4日前」。土日祝で繰り上がり、局によっては営業日換算やさらに前倒し
・10桁CMコードの発番にも2〜3営業日かかることがあり、緊急発番は受け付けられない
逆算のいちばん左に置くべきは、自社でコントロールできない工程です。撮影日は動かせますが、考査の日数と搬入締切は動きません。だからテレビCMのスケジュールは、撮影からではなく考査から数えます。
総合広告代理店フリーザロックエージェントでは、枠の選定から企画・制作(企画〜MA)、業態考査・表現考査の書類準備、広告事業者コードの取得、局ごとの搬入締切と技術仕様の管理までを一貫してお引き受けしています。放映後はビデオリサーチのデータをもとに、世帯/個人全体(4才以上)の視聴率推移・推定リーチ・リーチ単価までレポートします。
「この日に間に合いますか」「うちの素材は使い回せますか」というご相談も歓迎です。考査の最終判断は各放送局が行うため日数を保証することはできませんが、間に合わない見込みが立った場合は、その理由と代替案を正直にお伝えします。お気軽にお問い合わせください。


