「売上の目標はあるけれど、広告やSNSで何を目指せばいいのかわからない」
「KPIツリーを作れと言われたが、どう分ければいいの?」
結論から申し上げると、KPIツリーは、最終的な目標(KGI)を掛け算や足し算で分けていき、施策ごとに動かせる数字(KPI)までつなげた図です。①最終目標を1つ決める、②式で分ける、③自社で動かせる数字まで分ける、④今の数字と目標の数字を入れる、⑤数字ごとに担当の施策を決める、の5つの手順で作ります。施策の良し悪しを、同じ目標に向けた数字で判断できるようになります。
この記事では、総合広告代理店フリーザロックエージェントが、KPIツリーの作り方を、BtoBと店舗の例を使ってまとめます。
KPIツリーとは
KPIツリーは、目標の数字を木の枝のように分けて、どの数字を動かせば目標に届くのかを見える形にした図です。いちばん上に最終目標を置き、その下に「何と何を掛ければ、その数字になるか」を書いていきます。
| 言葉 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| KGI | 最終的に達成したい目標。「重要目標達成指標」の略 | 月の売上1,000万円 |
| KPI | KGIに向けて、途中の進み具合を測る数字。「重要業績評価指標」の略 | 問い合わせ数、商談数、来店数 |
| 施策の数字 | 広告やSNSなど、個々の施策で見る数字 | サイトの訪問数、広告のクリック数 |
大切なのは、上から下までが式でつながっていることです。下の数字が増えれば、上の数字も増える関係になっていれば、施策の数字を見るだけで、目標にどれだけ近づいたかがわかります。
KPIツリーが必要な理由
施策が増えると、媒体ごとに見る数字がばらばらになります。テレビCMは視聴率、WEB広告はクリック数、SNSはフォロワー数というように、物差しがそろわないため、どれが効いているのかを比べられません。
アドビの調査(2025年5月実施、日本を含む7か国のマーケティング担当者2,835人)では、日本のマーケターの27%が「どのチャネル(媒体)が有効か全く把握できていない」、54%が「ある程度理解しているが、データが手作業でばらばらになり、把握が遅れる」と答えました。合わせて81%が、媒体ごとの効果の把握に課題を抱えています。
KPIツリーを先に作っておくと、すべての施策を「どのKPIを動かすための施策か」で整理できます。予算をどこに増やし、どこを減らすかも、同じ物差しで判断できるようになります。
KPIツリーの作り方 5つのステップ
| ステップ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. KGIを決める | 最終目標を1つ、数字と期限で決める | 「売上」「新規受注件数」「応募数」など、事業の目的に直結する数字 |
| 2. 式で分ける | KGIを「○○×△△」「□□+◇◇」に分ける | 掛け算は「量×率」、足し算は「経路ごと」に分けると考えやすい |
| 3. 動かせる数字まで分ける | 施策で直接増やせる数字に届くまで分ける | 3〜4段で止める。細かくしすぎると管理できない |
| 4. 現状と目標を入れる | それぞれの数字に、今の実績と目標を書く | 実績がない数字は、最初の1〜2か月で測ってから目標を決める |
| 5. 施策と担当を決める | いちばん下の数字ごとに、担当する施策と人を決める | 1つの数字に担当がいない状態をなくす |
例1:問い合わせから受注するBtoBの会社
法人向けのサービスを、WEBからの問い合わせと電話・紹介で受注している会社の例です。数字は説明のための例です。
| 段 | 式 | 目標の数字(例) |
|---|---|---|
| KGI | 月の売上 = 受注件数 × 平均単価 | 1,000万円 = 20件 × 50万円 |
| KPI① | 受注件数 = 商談数 × 受注率 | 20件 = 80件 × 25% |
| KPI② | 商談数 = 問い合わせ数 × 商談になる割合 | 80件 = 200件 × 40% |
| KPI③ | 問い合わせ数 = WEBからの問い合わせ + 電話・紹介 | 200件 = 150件 + 50件 |
| 施策の数字 | WEBからの問い合わせ = サイトの訪問数 × 問い合わせになる割合 | 150件 = 15,000回 × 1% |
こうして分けると、「売上を増やす」という大きな目標が、「サイトの訪問を増やす(広告・SEO)」「問い合わせになる割合を上げる(ページの改善)」「商談になる割合を上げる(営業の対応)」のように、担当ごとの仕事に分かれます。
どこを伸ばすと効率がよいかも見えてきます。たとえば受注率を25%から30%に上げられれば、問い合わせの数を変えなくても受注は24件に増えます。広告費を増やす前に、営業や商談の改善で届く場合もあるのです。
例2:店舗で売上をつくる会社
飲食店やサロンなど、来店で売上をつくる会社の例です。数字は説明のための例です。
| 段 | 式 | 目標の数字(例) |
|---|---|---|
| KGI | 月の売上 = 来店客数 × 客単価 | 600万円 = 2,000人 × 3,000円 |
| KPI① | 来店客数 = 新しいお客様 + リピートのお客様 | 2,000人 = 500人 + 1,500人 |
| KPI② | 新しいお客様 = 予約・来店のきっかけ(WEB、チラシ、紹介など)の合計 | 媒体ごとに目標を置く |
| KPI③ | リピートのお客様 = 前月までのお客様 × 再来店の割合 | 会員数や再来店の割合を目標にする |
店舗の場合は、新しいお客様を増やす施策(広告、チラシ、地図アプリなど)と、リピートを増やす施策(会員、LINE、DMなど)で、見る数字が分かれます。どちらが不足しているのかを先に見極めると、使うべき施策も決まります。
業種ごとの最初の分け方
KGIを最初にどう分けるかは、業種や売り方によって変わります。迷ったときは、次の分け方から始めると考えやすくなります。
| 業種・売り方 | 最初の分け方 | その次に見る数字 |
|---|---|---|
| 通信販売・ネットショップ | 売上 = 注文数 × 平均の注文額 | サイトの訪問数、購入になる割合、リピート購入の数 |
| 法人向けのサービス | 売上 = 受注件数 × 平均単価 | 問い合わせ数、商談数、受注率 |
| 店舗(飲食・美容・クリニックなど) | 売上 = 来店客数 × 客単価 | 新しいお客様の数、再来店の割合、予約数 |
| 住宅・不動産 | 契約数 = 来場・来店の数 × 契約になる割合 | 資料請求、見学会の予約、来場の数 |
| 採用 | 採用数 = 応募数 × 採用になる割合 | 求人ページの訪問数、応募になる割合、面接の数 |
| 会員・定額サービス | 会員の売上 = 会員数 × 1人あたりの月額 | 新しく入る会員の数、やめる会員の割合 |
会員や定額サービスでは、新しいお客様を増やすことと同じくらい、やめるお客様を減らすことが売上を左右します。KPIツリーに「やめる割合」を入れておくと、広告だけに目が向くのを防げます。
テレビCMや新聞広告をKPIツリーに入れるには
テレビCM、新聞広告、シネアド(映画館広告)、交通広告などは、見た人の行動をクリックのように直接たどれません。そのため、KPIツリーのどこにも入らず、「効果がわからない施策」として扱われがちです。
こうした媒体は、次のような数字でツリーにつなぎます。
・社名や商品名での検索数(指名検索):名前を知った人が検索する数です。サイトの訪問数の一部として、出稿前後で比べます。
・「何で知りましたか」の回答:問い合わせフォームや来店時に、きっかけの媒体を聞きます。
・専用の電話番号やQRコード:媒体ごとに分けて、問い合わせやアクセスを数えます。
測り方の詳しい準備は、広告の効果測定のやり方で解説しています。
作るときの注意点
・KGIは1つにする:目標が複数あると、どの数字を優先するかで迷います。ブランドの認知など別の目的がある場合は、ツリーを分けます。
・分けすぎない:枝を細かくしすぎると、数字を集めるだけで手間がかかります。毎月確かめられる数に絞ります。
・数字の定義をそろえる:「問い合わせ」に資料請求を含めるか、電話を含めるかなど、数え方を決めて関係者で共有します。
・自社で動かせる数字で止める:市場の大きさなど、自社の施策では動かせない数字は、目標ではなく前提として扱います。
・決まった頻度で見直す:月に1回など、実績を入れて目標との差を確かめます。差が大きい数字から手を打ちます。
作ったKPIツリーを毎月使う流れ
KPIツリーは、作って終わりではありません。毎月の数字を入れて、どこを直すかを決める道具として使います。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 月の初め | 前月の実績を各段に入れ、目標との差を色などで示す |
| 定例会 | 差がいちばん大きい段を見つけ、原因と打ち手を話し合う |
| 打ち手を決めたとき | どの数字を、いつまでに、どれだけ動かすかを決めて記録する |
| 四半期ごと | 率(受注率、商談になる割合など)の前提を実績で更新し、目標を見直す |
差がいちばん大きい段に手を打つのがポイントです。たとえば問い合わせは目標どおりなのに商談が少ないなら、広告を増やしても受注は増えにくく、問い合わせへの対応の早さや、営業への引き継ぎを見直すほうが効果的です。
よくある質問
Q. KPIはいくつまでにすればよいですか?
決まった数はありませんが、毎月確かめて手を打てる数に絞ります。目安としては、KGIの下に3〜5個程度の主要なKPIを置き、細かい数字は施策の担当者が見る、という分け方がおすすめです。
Q. 目標の数字は、どうやって決めればよいですか?
まずKGIの目標を事業の計画から決め、受注率などの「率」は過去の実績を使って、必要な問い合わせ数や訪問数を逆算します。実績がない率は、最初の1〜2か月で測ってから決めます。
Q. 専用のツールがないと作れませんか?
表計算ソフトで十分に作れます。最初は手作業で数字を入れ、続けて見る数字が固まってから、自動で集める仕組みを検討します。
Q. 認知度を上げることが目的の施策は、どう扱えばよいですか?
売上につなげる式に無理に入れず、「認知度」「指名検索数」などを別のKPIとして置きます。そのうえで、認知度や指名検索が増えた時期に、問い合わせがどう動いたかをあわせて見ます。
まとめ:目標から施策まで、数字を式でつなぐ
・KPIツリーは、最終目標(KGI)を式で分け、施策ごとに動かせる数字(KPI)までつなげた図
・KGIを1つ決め、「量×率」「経路ごとの足し算」で3〜4段に分ける
・今の数字と目標を入れ、いちばん下の数字ごとに担当の施策と人を決める
・テレビCMや新聞などは、指名検索や「何で知りましたか」の回答でツリーにつなぐ
KPIを決めたあとの施策の進め方はマーケティング施策の進行管理のやり方、目標と施策を全体で管理する役割はマーケティングPMOとはをご覧ください。


