「CMの絵コンテって、何を描いたものなの?」
「絵コンテを見せられたけれど、どこを確認すればいいかわからない」
結論から申し上げると、CMの絵コンテは「完成した映像を、撮影の前に紙の上で見るための設計図」です。カットごとの絵に、映像の動き、ナレーション、テロップ、音楽、秒数を書き添えます。発注する側が絵コンテの段階でしっかり確認しておくと、撮影や編集のあとの大きな作り直しを防げます。
この記事では、総合広告代理店フリーザロックエージェントが、CMの絵コンテの役割、企画書やVコンテとの違い、絵コンテの読み方、確認するときのチェックポイントをまとめます。
CMの絵コンテとは
絵コンテは、CMの映像を「カット」と呼ばれる場面ごとに区切り、1コマずつ絵にしたものです。マンガのコマ割りに近いイメージです。
それぞれの絵の横には、次のような情報を書きます。
・映像の内容:だれが、どこで、何をしているか。カメラの寄り・引き、動き
・音:ナレーション、出演者のセリフ、BGM、効果音
・文字:画面に入れるテロップ、商品名、ロゴ、注意書き
・時間:そのカットが何秒か。全部を足すと15秒や30秒になるように組む
15秒や30秒という短い時間に、何をどの順番で見せるかを、関係者全員で同じ絵を見ながら決めるための道具です。
企画書・絵コンテ・Vコンテの違い
CMの制作では、企画が固まるにつれて、資料の形が変わっていきます。
| 資料 | 中身 | この段階で決めること |
|---|---|---|
| 企画書(企画案) | CMのねらい、伝えたいこと、表現のアイデア。複数案を出すことが多い | どの方向性で作るか |
| 絵コンテ | カットごとの絵と、ナレーション・テロップ・秒数 | 何を、どの順番で、何秒見せるか |
| Vコンテ(ビデオコンテ) | 絵コンテの絵や仮の素材をつなぎ、仮の音声を入れた簡単な動画 | 実際の時間の流れで見て、テンポや分かりやすさを確かめる |
| 香盤表・撮影台本 | 撮影の順番、場所、出演者、衣装、小道具などの一覧 | 撮影当日の段取り |
Vコンテは、必ず作るものではありません。アニメーションのCMや、テンポが大切なCM、社内で多くの人が確認するCMでは、Vコンテを作ると完成のイメージを共有しやすくなります。
CM制作の流れの中での位置
フリーザロックエージェントの制作の流れでは、ヒアリングのあとの「企画・構成」の段階で、企画案と絵コンテをご提出します。期間の目安は2週間ほどです。絵コンテが決まると、その内容にもとづいて出演者、ロケ地、スタッフ、機材を手配します。
つまり、絵コンテは撮影の準備を始める前の「最後の大きな決定」です。撮影が終わってから「やっぱり別のシーンがほしい」となると、撮り直しの費用と時間がかかります。制作全体の流れはCM制作の流れと期間でまとめています。
絵コンテの前に、発注側から伝えたいこと
よい絵コンテは、よい情報から生まれます。企画の前のヒアリングで、次のことを伝えていただくと、ねらいに合った絵コンテになりやすくなります。
・CMの目的:名前を知ってもらいたいのか、来店や申し込みを増やしたいのか、採用につなげたいのか。
・届けたい人:年代、性別、住んでいる地域、どんな悩みや関心を持っている人か。
・商品やサービスの強み:ほかと比べて選ばれている理由。お客様からよく言われる言葉。
・使ってほしい言葉・使ってほしくない言葉:社内で決まっている表記や、ブランドのルール。
・参考にしたいCM:「この雰囲気が好き」「こういう見せ方は避けたい」という例。
決まっていない項目があっても大丈夫です。ヒアリングの中で一緒に整理します。
絵コンテの読み方
絵コンテには、制作の現場でよく使う言葉が出てきます。主なものを、やさしく言いかえて紹介します。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| カット(C) | カメラが切りかわるまでの1つの場面。「C1」「C2」のように番号をふる |
| 寄り・引き | 寄りは被写体を大きく写すこと。引きは全体が見えるように広く写すこと |
| パン・ズーム | パンはカメラの向きを横や縦に動かすこと。ズームは映像を拡大・縮小すること |
| NA(ナレーション) | 画面に出ていない人が読む説明の声 |
| SE(効果音) | ドアの音、足音、チャイムなど、場面をあらわす音 |
| M(音楽) | BGM。どんな雰囲気の曲かを書く |
| SP(スーパー) | 画面に重ねる文字。テロップのこと |
| エンドカット | CMの最後の場面。商品名、ロゴ、問い合わせ先などを見せる |
絵はラフな線画のことも多く、絵のうまさはあまり関係ありません。大切なのは、絵と文字から「完成した映像」を想像できるかどうかです。わかりにくいところは、遠慮なく質問してください。
絵コンテで確認したい7つのポイント
1. いちばん伝えたいことが1つにしぼられているか。15秒のCMで伝えられることは多くありません。商品名と、いちばん伝えたいことが、見終わったあとに残る構成になっているかを確かめます。
2. 商品名や会社名が、いつ・何回出てくるか。最後のカットだけでなく、途中でも名前が見えたり聞こえたりするかを確認します。
3. 秒数に無理がないか。ナレーションを声に出して読み、時間内にゆっくり読めるかを測ります。早口になると、聞き取りにくくなります。
4. テロップが読める長さと時間か。文字が多すぎると、表示されているあいだに読み終わりません。注意書き(打消し表示)を入れる場合は、特に大きさと表示時間に気をつけます。
5. 表現に問題がないか。テレビCMは、放送前に放送局の考査(内容の審査)を受けます。「No.1」「最高」などの言葉や、効果を言い切る表現は、根拠や言い方を確認します。くわしくはテレビCMの考査とはをご覧ください。
6. 撮影できる内容か。撮影場所の許可、出演者の人数、小道具、天気に左右されるシーンなど、実際に撮れるかを制作会社と一緒に確認します。
7. ほかの媒体でも使う予定はあるか。Web広告やSNSでも流すなら、縦型の画面に切り出しても主役が欠けないか、短い尺の版も作るかを、この段階で決めておきます。使い回しの考え方はテレビCMとWeb動画の作り分けで解説しています。
絵コンテの段階で決めておきたいこと
| 項目 | 決めておく理由 |
|---|---|
| 出演者のイメージ(年代、雰囲気、人数) | キャスティング(出演者選び)の条件になる |
| 撮影場所(スタジオかロケか) | 費用と撮影日数、許可の手続きが変わる |
| ナレーションの声のイメージ | ナレーターの候補を探す手がかりになる |
| 音楽の方向性 | オリジナル曲か、権利処理ずみの音源か、既存曲かで費用と期間が変わる |
| 作る尺の種類(30秒・15秒・6秒など) | 撮影するカットの数が変わる |
| 社内で確認する人 | あとから別の人の意見で大きく変わるのを防ぐ |
修正の伝え方のコツ
絵コンテへの修正は、次のように伝えると、意図が正しく伝わりやすくなります。
・カット番号で指す:「C3のナレーションを〜に変えたい」のように、場所をはっきりさせます。
・理由も一緒に伝える:「主婦層に向けたいので、もう少しやわらかい雰囲気に」など、目的がわかると、制作側がよりよい案を出せます。
・社内の意見をまとめてから返す:確認する人が複数いる場合は、意見をまとめて1回で返すと、修正の回数と期間を抑えられます。
・決めたことを記録する:確定した絵コンテを「最終版」として保存しておくと、撮影や編集のときの基準になります。
よくある疑問
Q. 絵コンテは、発注する側が描く必要がありますか?
いいえ。絵コンテは、制作する側(監督や企画の担当者)が描くのが一般的です。発注する側は、伝えたいこと、届けたい人、使ってほしい言葉・使ってはいけない言葉、参考にしたいCMなどをお伝えください。
Q. 絵コンテと完成した映像は、まったく同じになりますか?
大きな流れは同じですが、細かいところは撮影や編集の段階で変わることがあります。たとえば、撮影したときにより良い表情が撮れれば、そちらを使うこともあります。大きく変える場合は、事前にご相談します。
Q. アニメーションのCMでも絵コンテは必要ですか?
必要です。アニメーションは、絵コンテのあとに一つひとつの絵や動きを作るため、絵コンテの段階で動きや秒数を細かく決めておくことが、仕上がりと費用の両方に影響します。
絵コンテでよくある失敗
| よくある失敗 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 担当者だけで確認し、撮影後に役員が見る | 方向性から変わり、撮り直しになる | 絵コンテの段階で、最終的に決める人にも見てもらう |
| 伝えたいことを足していく | ナレーションが早口になり、何も残らない | 足すなら、何か1つを削る。声に出して時間を測る |
| 商品やロゴの最新データを渡していない | 古いパッケージで撮影してしまう | 撮影する商品、パッケージ、ロゴの最新版を早めに渡す |
| Webで使う予定を伝えていない | 縦型にすると主役が切れる。出演者の契約が足りない | 使う媒体をすべて、絵コンテの前に伝える |
| 注意書きを最後に足す | 文字が小さく、表示時間も足りなくなる | 注意書きが必要な表現は、絵コンテの段階で場所と時間を確保する |
どれも、撮影の前なら直すのにお金がかからないものばかりです。絵コンテは「まだ紙の上だから、何度でも直せる」段階だと考えて、気になることは遠慮なく伝えてください。
まとめ:絵コンテは撮影前の「最後の大きな決定」
・絵コンテは、カットごとの絵に、ナレーション・テロップ・音楽・秒数を書いた設計図
・企画書で方向性を決め、絵コンテで中身と順番と秒数を決める。必要に応じてVコンテで動きを確かめる
・伝えたいことの数、名前の出し方、秒数、テロップ、表現、撮影できるか、ほかの媒体での使い方を確認する
・修正はカット番号と理由をそえて、社内の意見をまとめてから伝える
費用の考え方はCM制作の費用相場、全体の進め方はCM制作の流れと期間をご覧ください。テレビCMの放送枠についてはテレビCM(テレビ広告)のサービスページでご案内しています。


