「テレビCMを出すことになったけれど、正直、何から手をつければいいのか分からない」
「制作会社に相談するのが先か、それとも社内の承認を取るのが先か……」
結論から申し上げると、初めてのテレビCMで最初に着手すべきは制作ではありません。**「社内で何をもって成功と判断するかを決めること」と「その局で初めて出稿するために必要な手続きを洗い出すこと」**の2つです。ここを飛ばして制作から動き出すと、ほぼ確実に手戻りが発生します。
この記事では、総合広告代理店フリーザロックエージェントが、初めてのテレビCM出稿の全体フロー・初回だけ発生する手続き・社内稟議の通し方・放映前に整えておく受け皿までを、プロの視点で徹底解説します。
初めてのテレビCMは「制作」から始めてはいけません
「テレビCMを出す」と聞くと、まず頭に浮かぶのは撮影やキャスティングだと思います。ところが実務の順番は逆です。放送局が広告主向けに公開している手続きを見ると、CM素材の準備はテレビ東京では3番目、BSフジでは4番目に置かれています。いずれの局でも、素材づくりは最初の工程ではありません。
たとえばテレビ東京は、広告主向けサイトでテレビCMの実施手続きを「①CM枠検討 → ②業態審査 → ③CM素材の準備 → ④CM内容考査 → ⑤CM枠の正式発注 → ⑥CM素材搬入 → ⑦CM進行業務 → ⑧放送」の順で公開しています。BSフジは「CM枠の検討 → 業態審査(考査)→ CM枠の決定 → CM素材準備 → CM考査 → 搬入 → 放送 → 放送あと」というフローを示しています。素材準備の位置はテレビ東京が3番目、BSフジが4番目と局によって違いますが、枠と会社の審査が素材より前に来る点は共通です。
つまり、素材を作る前に「どの枠に出すか」と「その会社がCMを出せるか」を確定させるのが正しい順番です。
この順番を守る理由は3つあります。
- 業態審査(広告主そのものを審査する初回のみの工程)は、CM素材ができていなくても着手できる。ここを先に動かすと全体の期間が短くなる
- 枠が決まらないと秒数・エリア・本数が決まらず、「何秒のCMを何本作るのか」という制作の仕様が固まらない
- 考査で改稿を求められたとき、完成尺を直すコストは絵コンテを直すコストとは比べものにならない
「テレビCMは制作に時間がかかる」と思われがちですが、初めての出稿でいちばん時間を取られるのは考査です。とくに初めて取引する局では、広告主の事業内容そのものを見る業態考査(業態審査)が必要になります。**スケジュール上で時間がかかる工程は考査**——まずこの1点だけ押さえてください。
初めてのテレビCMは制作から始めません。放送局が公式に示す手順でも素材準備はテレビ東京で3番目・BSフジで4番目に置かれており、先に動かすべきは枠の相談と業態審査です。
テレビCM出稿までの全体フロー|担当者が何をいつ用意するか
テレビ東京とBSフジが公開している実施手続きをもとに、8工程を整理しました。並び順はBSフジのフローに合わせています。工程の順序は局によって違い、たとえばテレビ東京はCM枠の正式発注をCM内容考査のあとに置いています。自社が出す局の公開手続きで、必ず順序を確認してください。「担当者が用意するもの」の欄が、宣伝・マーケ担当者の実務そのものです。
| ステップ | 工程 | 主に動く人 | 担当者が用意するもの | 初回の目安 |
|---|---|---|---|---|
| ① | CM枠の検討 | 広告主・代理店・局の営業 | 目的/ターゲット/対象エリア/予算枠/希望する放映時期 | 数日〜数週間 |
| ② | 業態審査(業態考査) | 放送する各放送局の考査部門 | 会社に関する書類の準備(必要書類は局ごとに異なります。詳細は考査の記事へ) | BSフジは「一般的に5営業日ほど」と公開。局により幅がある |
| ③ | CM枠の決定 | 局の営業・代理店 | 社内の発注承認(稟議) | 社内の決裁フローに依存 |
| ④ | CM素材の準備 | 制作会社・代理店 | 商品・サービスの情報、使用できる既存素材、権利関係の確認 | 撮影の有無で大きく変動 |
| ⑤ | CM内容考査(表現考査) | 放送する各放送局の考査部門 | 考査に出すCM素材と、その内容を裏づける資料(求められる資料は局ごとに異なります。詳細は考査の記事へ) | BSフジは「一般的に5営業日」。改稿が入ると延びる |
| ⑥ | CM素材の搬入 | 代理店・ポストプロダクション | 10桁CMコード、CM進行表、規定フォーマットの素材 | 搬入締切は放送日を含まない4日前まで |
| ⑦ | CM進行業務 | 代理店・放送局 | テレビ番組CM連絡表またはテレビスポットCMスケジュール表 | 搬入と同時 |
| ⑧ | 放送・放送後 | 放送局 | — | 放送後に「放送確認書」が発行される |
「5営業日」はBSフジが自社の目安として公開している数字で、すべての局に当てはまるものではありません。局や時期によっては数週間以上を要することもあり、当社の実務でも局差があります。時期・局・案件の内容によって変動しますので、出稿する局の目安を必ず確認してください。
担当者が実際に手を動かすのは、②の書類集めと⑤の資料準備、そして③の社内承認です。
②で必要になる書類は局ごとに違います。たとえばBSフジは登記簿謄本または履歴事項全部証明書の提出を求めており、局によって「発行後◯ヶ月以内」という条件も異なります。取り直しになると1週間単位で遅れますので、出稿する局が固まってから条件を確認して取得するのが確実です。
考査の中身(どの表現が引っかかるのか、追加の審査がある業種はどれか、必要書類の詳細)は、それ自体で1本の記事になる領域です。この記事では「考査という工程があり、初回はここが最も時間を取る」ことだけ押さえておいてください。
テレビCM出稿の全体は8工程。担当者の実務は「書類集め」「資料準備」「社内承認」の3つに集約されます。所要日数は局が公開する目安を起点に、余裕を持って引くのが安全です。
社内稟議をどう通すか|稟議書に書くべき9項目と投資回収シナリオ
ここからが、この記事の本題です。前章で見たとおり、スケジュール上で時間がかかるのは考査です。一方で、案件そのものが止まりやすいのは社内です。時間がかかる工程と、止まりやすい工程は別だと考えてください。とくに「テレビCMは効果が測れないのではないか」という役員の疑問に答えられないと、金額の大小に関わらず話が進みません。
稟議書に書くべき9項目
そのまま社内資料に転記できる形で並べました。項目を埋めていく作業が、そのまま出稿設計になります。
- ① 目的:認知拡大/指名検索の獲得/採用ブランディング/取引先・小売への信用付与などのうち、1つに絞る
- ② 対象エリアと期間:なぜそのエリアなのか、なぜその時期なのかを書く
- ③ メニューと金額:スポットかタイムか、地上波かBS・CSか。放映料と制作費は必ず分けて書く
- ④ 総額の内訳項目:放映料(電波料)/制作費/考査対応費/素材搬入費/音楽・出演者の権利費/代理店手数料
- ⑤ KPIと測定方法:何を、どの手段で、いつ測るのか
- ⑥ 判断のタイミング:いつ「続ける/やめる」を決めるのか
- ⑦ 撤退・縮小の基準:どの数字を下回ったら止めるのか
- ⑧ 受け皿の整備計画:受電体制・LP・在庫・人員(後述のチェックリストを添付する)
- ⑨ 初回だけ発生するコストと手続き:2回目以降は不要になる分を明記する
⑨を書くかどうかで、稟議の通りやすさは大きく変わります。
初めてのテレビCMには、広告事業者コードの取得や業態審査のように「一度やれば次からは不要になる」作業が含まれています。これを初期投資として切り分けて示せば、「1回目が高く見えるのは初期費用が乗っているから」という説明が成立します。逆にすべてを混ぜて総額だけ提示すると、単価の高い施策に見えてしまいます。
KPIは「到達・態度変容・行動」の3層に分けて置く
テレビCMのKPIを1つに絞ろうとすると、必ず無理が出ます。「CMを見た人が増えた」と「売上が増えた」の間には距離があるからです。稟議書では3層に分け、それぞれの測り方と見るタイミングまで書いてしまうのが実務的です。
| 層 | KPIの例 | 測り方 | いつ見るか |
|---|---|---|---|
| 到達(届いたか) | GRP(延べ視聴率)、リーチ、フリークエンシー | ビデオリサーチのデータをもとにした出稿実績レポート。世帯/個人全体(4才以上)の別で出せる | 放映終了後すぐ |
| 態度変容(伝わったか) | 認知率、動画の好感度、購入意向 | 調査会社の広告効果調査。ビデオリサーチ「クリエイティブカルテ」は、認知率・動画の好感度・動画接触による商品・サービスの購入意向・動画クリエイティブから受けるイメージを指標としたパッケージ調査(調査地域は関東1都6県・15〜69歳) | 放映期間中〜終了直後 |
| 行動(動いたか) | 指名検索数、サイト流入、入電数、来店・来場、購買 | 自社の検索連動広告の指名インプレッション、アクセス解析、コールトラッキング、POS。ビデオリサーチは視聴ログと人流データを掛け合わせ、店舗やイベントへの来訪・購買をKGIに設定できる調査も提供している | 放映開始直後から日次 |
ここで大事なのは、**どこまでを「効果」と認めるかを出稿前に社内で合意しておく**ことです。放映後に「売上が伸びたのはCMのおかげか」を議論し始めると結論は出ません。「指名検索と入電の伸びまでをテレビCMの効果とみなし、受注への転換率は営業側のKPIとする」といった線引きを、稟議書の段階で書いてしまうほうが健全です。
「テレビCMは効果が測れない」という反論への答え方
役員から必ず出る反論です。次の3点セットで答えます。
- 1. 到達は事後に数字で出る。GRP・リーチ・フリークエンシーは出稿実績として報告できるため、「誰にどれだけ届いたか」は測定済みの事実として扱えます
- 2. 行動は自社側で測れる。指名検索数・サイト流入・入電数は、自社の管理画面と計測用の電話番号で取得できます。ただし前提が1つあり、放映前のベースライン(平常時の数字)を取っていないと差分が出せません
- 3. 業界のノーム値を参照できる。ビデオリサーチの「クリエイティブカルテ スペシャルレポート」には、2,500素材以上の調査をもとにした認知Norm曲線が収録されており、GRPと認知の関係を業界水準として参照できます。個社向けの事前シミュレーションサービスではありませんが、稟議の段階で見込みの当たりをつける材料として使えます
ただし、「テレビCMを打つと指名検索が◯%増える」といった一般値を稟議書に書くのは避けてください。
業種・エリア・出稿量・クリエイティブによって結果は大きく変わるため、他社の数字を自社の見込みに転用すると、後で説明がつかなくなります。稟議書に書くべきは他社の実績値ではなく、自社の測定設計です。「何を、どの手段で、いつ測るのか」が書かれていれば、数字を約束していなくても議論が前に進みやすくなります。
投資回収シナリオは「判断日」と「撤退基準」で作る
初回出稿で最も費用対効果が悪いのは、効いているのか分からないまま続けてしまう状態です。投資回収シナリオといっても複雑な計算は要りません。次の3つを数字で置くだけで、シナリオとして成立します。
- 判断日:放映開始から何週間目のデータで判断するかを決める。スポットCMは最短1週間から期間を設計できるため、1回目の出稿そのものをテスト期間として位置づけられます
- 継続条件:指名検索数・入電数が、放映前のベースラインに対してどの水準に達していれば継続するか。水準は他社事例ではなく自社の平常値から設定します
- 撤退・縮小条件:どの数字を下回ったら止めるのか、あるいはエリア・本数・秒数のどれを削るのか
撤退基準を先に書くことは、消極的な行為ではありません。役員がいちばん気にしているのは「歯止めがあるか」です。止め方が書かれた稟議書は、書かれていない稟議書より通りやすくなります。加えて撤退基準を決める作業は「何を測るか」を強制的に確定させるため、⑤のKPI設計の精度も上がります。
稟議のもう一つの盲点が、経理と法務です。放送局によっては、初めて出稿する企業は放送前の請求・支払いとなる場合があります(BSフジは自社の案内でその旨を明記しています)。前払いになると社内の支払サイトや決裁ラインが変わることがあるため、金額が固まる前に経理へ一報を入れておいてください。
稟議で問われるのは金額の妥当性より、「何をもって効果と認めるか」と「どこで止めるか」です。KPIを到達・態度変容・行動の3層に分け、測定手段・判断日・撤退基準まで書き込むと議論が前に進みます。
初回だけ発生する手続き|2回目以降は不要になるものを切り分ける
初めてのテレビCMには、「一度やれば以後は不要になる手続き」と「毎回必要な手続き」が混在しています。ここを切り分けておくと、社内説明もスケジュール管理も一気に楽になります。
| 手続き | 初回のみ/毎回 | 窓口 | 押さえておく点 |
|---|---|---|---|
| 広告事業者コード(4桁)の取得 | 初回のみ | 共通コード管理センター(CCC) | 発番は無料。申請順に自動発番され、一度発番されると変更されません。不備がなくても発番まで2〜3営業日かかることがあり、緊急の発番依頼は受け付けられません |
| 素材コード(6桁)の発番 | CM素材ごとに毎回 | 広告事業者本人が発番・管理 | CCCへの申請・報告は不要。広告事業者コードと合わせて10桁CMコードになります |
| 業態考査(業態審査) | その局で初めて出稿するときのみ | 放送する各放送局 | 「会社として初回」ではなく「その局で初回」です。エリアを広げるたびに、新しい局で再発生します |
| 表現考査(CM素材考査) | その局で放送実績のない素材ごとに毎回 | 放送する各放送局 | 素材を差し替えれば、また必要になります |
| CM素材の技術仕様への対応 | 毎回 | 制作会社・ポストプロダクション | HD素材・16:9・1080i。搬入可能な媒体やオンライン搬入の可否は、各局の設備状況によって異なります |
| CM素材の搬入 | 毎回 | 代理店・ポストプロダクション | 搬入締切は放送日を含まない4日前まで。土・日・祝日をはさむ場合はその日数分だけ繰り上がります |
| CM進行表・連絡表の提出 | 毎回 | 代理店 | 10桁CMコードの記載が必要。素材名は搬入書式とメタデータで完全に一致させます |
| 支払条件の設定 | 初回のみ(局との取引開始時) | 放送局・代理店 | 初回出稿は放送前の請求・支払いとなる場合があります |
広告事業者コードは「10桁CMコードの頭4桁」
テレビCMを放送するには10桁CMコードが必要で、その内訳は共通コード管理センターが発番・管理する4桁の広告事業者コードと、CM素材を識別する6桁の素材コードです。広告事業者コードは、CM素材にクレジットされる素材広告主に対して発番されます。
押さえておきたいのは、1法人1コードが原則だという点です。株式会社なら本社単位で、事業所・支店・事業部単位での取得はできません(学校法人や医療法人は法人単位、地方公共団体は県・市・町の単位)。なお、CM素材をオンラインで送稿する場合は、広告主だけでなく放送局・広告会社・制作会社やポストプロダクションもコードを持っている必要があります。
申請は原則として電子申請です。入力後にセンターから届くメールのURLから追加書類をアップロードする流れで、基本的に必要なのは申請する広告事業者の名刺です(申請代行者の名刺は無効)。合併や社名変更のタイミングと重なる場合は扱いが変わるため、早めの確認が安全です。
個人事業主の方は、そもそも取得できるのかを気にされることが多いのですが、共通コード管理センターは法人格を持たない個人事業所等でも取得は可能としています。その場合に必要なのは、開業届の写しまたは代表者の名刺のPDFです。
10桁CMコードが付番されていない素材は、放送できません。
これは一般社団法人日本民間放送連盟・営業委員会/日本広告業協会・テレビ委員会「テレビCM素材搬入基準」【2023年2月改訂版】(2023年4月適用)に明記されたルールで、放送局は付番のない素材を受け付けません。「考査に通ったのに放送できない」という事態は、ここで起きます。コードは考査後に取るものではなく制作と並行して押さえるものです。発番に数営業日かかることがあり、緊急対応は利きません。
技術仕様は「再搬入」という最悪の手戻りにつながる
搬入基準では、各局の機器に対応していないフォーマットのCM素材はCMバンクへの収録ができず放送できないため、適合したフォーマットでの再搬入をお願いすることになる、と明記されています。搬入締切の直前にこれが起きると、放映開始日そのものが動きます。制作会社を選ぶ段階で「テレビCMの搬入実績があるか」を確認しておくだけでも、リスクは大きく下がります。
もう一つ、企画段階から効いてくる規定があります。搬入基準は、CM内容の開始点から0.5秒間と終了点までの0.5秒間を必ず無音声にすることを定めています。15秒CMなら、音声に使えるのは実質14秒です。ナレーション原稿の文字量は、この前提で組む必要があります。音声レベル(ラウドネス)についても民放連の技術規準に沿う必要があり、これらは編集ではなく原稿の段階で決まる話です。
「初回のみ」の欄は、そのまま社内資料に載せてください。初期費用と継続費用が分かれて見えるようになり、2回目以降の見通しが立ちます。逆に言えば、初回の負担を理由に1回で出稿をやめてしまうと、初期投資を回収しないまま撤退することになります。
初回だけ必要なのは広告事業者コードの取得・業態考査・支払条件の設定です。ただし業態考査は「その局で初回」なので、エリアを広げるたびに再発生します。技術仕様と搬入締切は毎回必要です。
受け皿整備チェックリスト|放映日の何日前までに何を終えるか
テレビCMは需要を作る媒体です。ただし、作られた需要は受け皿がなければそのまま流れていきます。初めての出稿でいちばん惜しいのは、CMそのものの失敗ではなく、届いた反応を取りこぼすことです。
放映初日をD日として逆算で並べます。日数はフリーザロックエージェントが実務で使う目安で、社内の承認プロセスや店舗数によって前後します。
| 期限 | 領域 | やること | 主な担当 |
|---|---|---|---|
| D-30 | 在庫・供給キャパ | CMで訴求する商品の在庫を積む。予約制なら予約枠を増やす。納期やリードタイムが伸びる場合の案内文を先に用意する | 商品・生産・店舗 |
| D-30 | 人員キャパ | 放映週の人員シフトを確定させる。店舗なら接客、BtoBなら一次対応の担当者を決める | 各部門 |
| D-14 | 受電体制 | 代表番号の同時着信数を確認する。放映される時間帯に合わせてシフトを寄せる。あふれた場合の自動応答・折り返しルール・受付フォームへの誘導を決めておく | 総務・カスタマーサポート |
| D-14 | 計測の下ごしらえ | アクセス解析の目標設定、計測用の電話番号(コールトラッキング)の発行。指名検索数・サイト流入・入電数の平常値を取り始める | マーケティング |
| D-14 | LP・サイト | CMで使う言葉とサイトの言葉を揃える。ファーストビューにCMのキーコピーを置く。スマートフォン表示とフォームの入力項目を点検する | Web担当 |
| D-14 | Googleビジネスプロフィール | 店舗の営業時間・電話番号・写真・最新情報を更新する。CMを見て検索した人が最初に見る面になります | 店舗・Web担当 |
| D-7 | 指名検索の刈り取り | 検索連動広告で、自社名・商品名・CM内のフレーズを指名キーワードとして押さえる。ひらがな・カタカナ・英字・よくある誤記の表記ゆれも登録する | 運用担当 |
| D-7 | 店頭・販促物の連動 | POP・のぼり・チラシ・パッケージにCMと同じコピーを使う。「テレビCM放映中」の表示を入れる | 営業・販促 |
| D-3 | 社内周知 | 放映日時・放映局・CMの内容を全社に共有する。問い合わせを受ける全員が「あのCMですね」と答えられる状態にする | 広報 |
このなかで、後から取り返せないものが1つだけあります。放映前のベースラインです。
指名検索数・サイト流入・入電数の平常値は、放映が始まってからでは取得できません。少なくとも2週間、できれば1ヶ月分の平常値を先に押さえておいてください。これがないと、放映後にどれだけ数字が動いても「もともとこうだったのではないか」という反論に答えられません。稟議書に測定方法を書くのは、この作業を予算とスケジュールに乗せるためでもあります。
受電については、放映直後に入電が集中する前提で設計します。見落としやすいのが放映時間帯です。単価を抑えるために深夜帯や早朝帯の枠を選ぶと、放映が営業時間外に当たることは珍しくありません。営業時間外の枠に出すのであれば、自動応答から受付フォームへ誘導するか、Web側で完結する導線を先に用意しておくべきです。
指名検索の刈り取りも抜けがちです。CMを見た人は検索に向かうことが多く、そこで自社が最上部に出てこなければ比較サイトや競合に流れます。**社名や商品名の指名キーワードは、放映前に押さえておく**のが基本です。CM内の印象的なフレーズも検索されるため、表記ゆれや誤記まで含めて登録しておいてください。
受け皿の整備は、CMの制作費より安く済むことが多いのに、結果への影響が大きい部分です。稟議書の⑧に「受け皿整備計画」として1枚添えておくと、「作って流すだけの企画ではない」ことが伝わり、稟議の説得力が上がります。
受け皿は在庫・人員(D-30)、受電・計測・LP・Googleビジネスプロフィール(D-14)、指名検索と店頭連動(D-7)の順で仕上げます。取り返しがつかないのは、放映前のベースライン取得です。
初回の出稿は「手続きと測定の型を社内に残す回」として設計する
「初めてなので、まずは小さく試したい」というご相談は非常に多くいただきます。ただ、初回に限っては、いくらから組めるかよりも「次につながる型を社内に残せるか」で設計したほうが、結果として費用対効果は良くなります。
メニュー別の予算目安と、その金額が自社にとって意味を持つかどうかの判断軸(商圏カバー率や粗利からの逆算)は、中小企業のテレビCMを扱った記事で整理していますので、金額から詰めたい場合はそちらをご覧ください。
初回の設計としては「下限のメニューで1回まわして、社内に手続きのノウハウと測定のベースラインを残す」という考え方があります。初回だけ発生する手続きを済ませてしまえば、2回目以降の同じ局への出稿は確実に軽くなります。
予算を組むときに気をつけたいのは、請求書に並ぶ項目が放映料だけではないことです。稟議項目④に挙げた6項目をそのまま並べたうえで金額を入れてください。**放映料だけを予算に置いて制作費を忘れる**のが、初回でもっとも多い漏れです。
出稿時期による変動もあります。一般に混み合うのは年度末の3月・上期末の9月・年末商戦の11〜12月で、緩むのは2月・8月です。ただし時期・局・枠の空き状況により変動しますので、希望時期が繁忙期に当たるなら早めに枠を押さえる前提でスケジュールを引いてください。
初回は金額の大小より、手続きと測定の型を社内に残せるかで設計します。メニュー別の予算目安と金額の判断軸は中小企業向けの記事へ。稟議書には放映料だけでなく制作費・権利費・手数料まで項目を並べ、繁忙期を避けられるかどうかも合わせて検討します。
初めてのテレビCMでつまずく5つのポイント
最後に、初回出稿でよくある失敗を5つに整理します。原因はほぼすべて「順番」です。社内資料の最終チェックリストとしてお使いください。
① 制作から動き出してしまう
完成尺ができてから考査に出すと、改稿を求められたときに映像・テロップ・音声のすべてを直すことになります。絵コンテやナレーション原稿の段階で見通しを取るのが定石です。
② 後からエリアを広げる
業態考査は「その局で初めて出稿するとき」に必要です。ある局で出したあとに別エリアを追加すると、そのエリアの各局で改めて業態考査が発生します。将来的に広げる可能性があるなら、最初の相談時に伝えておいてください。
③ 素材の技術仕様を後回しにする
搬入可能な媒体やオンライン搬入の可否は局ごとに違い、対応していないフォーマットでは再搬入になって放映開始日が動きます。0.5秒の無音区間や音声レベルの規定も、編集ではなく原稿の段階から効いてきます。
④ 支払条件と社内の経理フローを詰めていない
初めて出稿する企業は放送前の請求・支払いとなる場合があります。前払いになると社内の支払サイトや決裁ラインが変わることがあるため、金額が固まる前に経理・法務を巻き込んでおいてください。
⑤ 受け皿を用意しないまま放映日を迎える
放映日が決まってから受電体制の相談を始めると間に合いません。前章のチェックリストは、稟議の段階で予算とスケジュールに組み込んでおいてください。
つまずく原因は、ほぼすべて順番です。制作より先に枠と考査、放映より先に受け皿、そして経理フローは金額が固まる前に確認しておくべき項目です。
まとめ:初めてのテレビCMは『制作からではなく、手順と社内合意から始める』
初めてのテレビCMについて、押さえておきたい点を整理します。
・放送局が公開する手続きでも、CM素材の準備はテレビ東京で3番目、BSフジで4番目。先に動かすのは枠の相談と業態審査
・全体は8工程。担当者の実務は「書類集め」「資料準備」「社内承認」に集約される
・初回だけ必要なのは広告事業者コードの取得・業態考査・支払条件の設定。ただし業態考査は「その局で初回」なので、エリアを広げるたびに再発生する
・10桁CMコードのない素材は放送できない。コードは考査後ではなく、制作と並行して押さえる
・稟議ではKPIを到達・態度変容・行動の3層に分け、判断日と撤退基準まで書き込む
・「効果が測れない」への答えは、到達は事後に数字で出る/行動は自社で測れる/業界のノーム値を参照できる、の3点セット
・放映前のベースライン取得だけは、後から取り返せない。最低2週間分を先に押さえる
テレビCMは、出してから考えることが少ない媒体です。裏を返せば、出す前に決めておくことが多い媒体だということです。だからこそ初回は、売上そのものよりも「手続きと測定の型を社内に残す回」として設計する価値があります。
フリーザロックエージェントでは、枠の選定から企画・制作、業態考査と表現考査の書類準備、広告事業者コードの取得、局ごとの搬入締切と技術仕様の管理まで、初めての出稿に必要な工程をまとめてお引き受けしています。放映後は、ビデオリサーチのデータをもとに世帯/個人全体(4才以上)の視聴率推移・推定リーチ・リーチ単価をレポートしてお渡しします。社内報告にそのまま使える形でお出しできるため、次の稟議の材料になります。
「うちの予算では何ができるのか」「社内をどう説得すればいいのか」といった、出稿前の段階のご相談も歓迎です。ラジオ・OOH・Web動画など他媒体との組み合わせも含めて、率直にお話しします。お気軽にお問い合わせください。


