「CMを制作する」と聞くと、様々な工程があり複雑で難しい印象があるかもしれません。しかし実際は、企画を立てて、絵コンテを確認して撮影に入り、そこから編集作業を行って完成、といったシンプルな流れとなっています。
今回は、CM制作の流れ、各工程の詳細やCMの制作期間ついて解説します。また、CM制作費用や金額がかかるポイントについてもわかりやすくご紹介します。
CM制作の流れ
9つのステップに分けて紹介します。急ぎの場合は数週間で制作することもありますが、企画FIXまでに1か月半ほど、撮影から編集・完成まで1か月半の合わせて3か月間はスケジュールとして確保しておくと安心です。
ステップ1:打ち合わせ・オリエンテーション
どのようなCMを作るのか、広告代理店やCM制作会社と打ち合わせをしながら、要件を整理するところからスタートします。CMを作ろうと思った目的や希望の条件面を、できるだけ明確に伝えましょう。
・ターゲット層はどこか(年齢/性別/エリア/職業/生活動態/趣味趣向・・など)
・訴求点の整理(名称・サービス価値など)
・どの媒体で活用するのか(テレビ・交通サイネージなど)
・予算
・納期
ステップ2:企画
基本的な要件が固まったら、実際に企画の段階に入ります。
通常は「絵コンテ」と呼ばれる、CMの内容を絵で説明したものを作成し、関係者の共通認識を図ります。初期段階では複数案作成を行い、方向性を定めた上でブラッシュアップしていくと効率的です。
また、絵コンテでイメージが付きにくい場合は、仮の映像を繋ぎ合わせた「ビデオコンテ(Vコン)」を制作するのもおすすめです。
企画が固まった後に追加要素や修正などが発生すると、スケジュールや予算面における様々な問題がでてきますので、この段階で社内のコンセンサスがとれると安心して制作を進められます。
ステップ3:考査
企画が固まったら、その内容を各媒体で放送しても問題ないか審査を行う「考査」が必要です。
基本的には絵コンテやそのCM内容に関する情報(商品・サービスの資料など)を広告代理店経由で媒体社へ送ります。業態やCMの内容によって考査の期間は様々ですが、1週間から2週間程で考査結果がわかります。
「最大級」「比較」「効果効能」など注意すべきポイントは多々ありますが、景品表示法などの法律や業界団体・媒体社のガイドラインに則った内容、科学的な根拠を証明でき、視聴者に誤解をあたえない表現であれば基本的には問題なく考査受理となります。
ステップ4:撮影準備
CM内容に沿って、様々な撮影準備を行っていきます。
・スケジュール
企画段階で大まかなスケジュールは設定しますが、撮影日の決定や撮影当日の動きを示す「香盤表」の作成など、詳細を詰めていきます。
・スタッフィング
こちらも企画段階で行う部分もありますが、「衣装」「スタイリスト」「ヘアメイク」「照明」「音声」「美術」など詳細を決定していきます。各分野のスタッフの元、衣装や小道具・美術、オリジナル音源などの制作も行っていきます。
・出演者
スタッフィングの一部ではりますが、CMに起用する演者を選定します。主にキャスティング会社の協力のもと、役柄にあった複数候補の中から決定していきます。役者の経歴や写真の資料である「宣材」をもとに決定する場合もあれば、オーディションで決定する方法もあります。また、著名なタレントを起用する場合ではタレントありきでCM内容の企画をする場合が多いです。
・ロケハン
企画にマッチした撮影地を決定します。インターネットやコーディネーターなどを活用し、候補地を出し、実際の現場まで行き、現地の環境を確認します。
・PPM
「PPM」とは、「プリ・プロダクション・ミーティング」の略称です。概ね準備が完了した段階で、広告代理店、制作会社など関係者全体で行う、撮影前の最終ミーティングとなります。内容に相違や不備がないか全員で確認することで、より確実な進行を行うための作業となります。
ステップ5:撮影
準備が整ったらいよいよ撮影に入ります。撮影には大きく3つの方法があります。
屋外で撮影する方法です。当日の天候や周辺環境に左右される場合もありますが、自然やダイナミックな映像を撮ることができるので、屋外ならではの良さがあります。
・スタジオ撮影
撮影スタジオをレンタルし撮影する方法です。大小さまざまな種類のスタジオがあり、企画に適した場所を選定します。美術などのセットを一から組むことができ、自由度の高い撮影ができるのがポイントです。
・ロケセット撮影
「屋内ロケ」とも呼ばれ、“撮影スタジオではない屋内”で撮影する方法です。基本的には既存の部屋や建物などの空間をほぼそのまま撮影場所として使用するので、よりリアルな環境を撮影することができるのがメリットです。
実際の撮影では、カット毎にカメラや照明のセットを行います。そのため1カット毎に撮影内容が問題ないかチェックを行い、OKがでてから次のカットの撮影に進みます。そうして、全てのシーンの収録を終えたら撮影完了となります。
ちなみに、アニメーションやCGなどで全編を構成する、撮影を行わない企画の場合はこのステップを飛ばして、次の編集へと進みます。
ステップ6:編集
撮影した内容を調整し繋ぎ合わせる工程です。編集には主に2つの種類があります。
・オフライン編集
「仮編集」とも呼ばれ、おおまかな流れを確認するために映像をつないでいく作業です。膨大な撮影素材の中からどのカットを使うか厳選したり、仮ナレーションや音と合わせて尺の調整を行っていきます。オフライン編集段階のデータ(試写データ)で確認や修正を行います。
・オンライン編集
「本編集」とも呼ばれ、仮編集ではできない高度な演出を加えるなど、最終的な仕上げの編集作業になります。この段階に入ると大きな修正ができなくなりますので、注意が必要です。また、低容量の動画や簡易的な動画の際はオンライン編集を行わない場合もあります。
ステップ7:MA編集
MAとは「Multi Audio」の略称となり、BGMや効果音(SE)、ナレーションといった音の最終調整を行います。編集スタジオにナレーターに来てもらい、映像をチェックしながら直接声を入れていき、最後に微調整を行って終了です。このMA作業はやり直しができないため、直接スタジオに行き、修正箇所については現場で指示する必要があります。
ステップ8:納品
MAが終われば、CM動画は完成です。映像データや完成版の絵コンテなどを広告会社や制作会社から納品し終了となります。また、媒体毎に入稿規定が決まっているので、各媒体のフォーマットに合わせたデータも作成します。
ステップ9:入稿
完成したデータを媒体社へ入稿します。テレビCMの場合、「XDCAM」と呼ばれる記録メディアを直接入稿する方法と、オンライン上でデータ入稿する方法の2種類があります。いずれも広告代理店を経由するのが基本となりますので、お任せいただいて問題ありません。
CM制作の金額・費用感
CM制作には、企画、撮影、編集といったそれぞれの作業や携わるスタッフに対する人件費が発生します。そのため、企画内容によって金額は変動します。数万円~数十万円で予算を削減して制作することもあれば、タレントなどを起用して数千万円の予算をかけることもあります。スタンダードなCMであれば100万円~500万円ほどが相場となっています。
また、費用に大きく変動するポイントとしては以下となります。
・撮影日数
機材や人件費は1日あたりの稼働で算出されます。そのため、様々なシーンを盛り込みたいがために撮影日数を増やしていくと、想像以上に予算が増えていくので、できれば撮影日数は少なく抑えられると理想的です。
・撮影場所
遠方へのロケや海外での撮影などが発生する場合、それだけで数十万円から数百万円単位でロケ費用が発生する場合があります。スタッフや機材の移動、宿泊なども予算に組み込まれますので、特別な理由がない限りは日帰りできる範囲で撮影しましょう。
・タレント起用
誰もが知るような有名なタレントを起用することで、高い宣伝効果が期待できますが、その分、高額な契約料が発生します。数百万円単位から数千万単位などタレントによって契約金額はさまざまですが、いずれにせよ大きいウェイトを占めることが多々あります。タレント以外の代替案はないか、どうしても起用したい場合は、契約期間を短い期間に限定するなどしっかりと検討する必要があります。
・CGやアニメーション
撮影した映像であれば、編集作業はあるものの、基本的には撮影内容のママでも問題ないですが、CGやアニメーションについては、1フレーム単位で映像を1から作り上げなければならないので、その分費用が高額になります。実写では表現できない良さも当然ありますが、費用という面では相応にかかってきますので注意が必要です。
まとめ
CM制作の流れと費用感について説明してきましたがいかがでしたでしょうか。
制作期間については、およそ3か月を目安に企画から撮影、編集まで行い、予算については100万円~500万円ほど投下できると、目的に応じて幅広い選択肢の中からCM制作を進めることができます。
もちろん、短納期やできる限り予算を圧縮したいというご希望を叶えることもできますので、動画制作をお考えの際はぜひフリーザロックエージェントまでお問い合わせください!